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□唇検査
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廊下で呼び止められ、夕月は戸惑う。

「何もしてませんよ。僕は、ただ」

「ただ何だよ」

焔椎真の瞳が明らかに怒っている。

「ルカと話してただけです」

「一晩あいつと一緒にいて何もなかったってのか」

「そうです」

「へぇ」

壁に追いつめられ、彼は見下ろしてきた。

「俺よりあいつがいいんだろ?おまえは」

「そんなこと」

「何で俺と付き合ってんの?同情?可哀想だから、ちょっと付き合ってやるかって?」

「違います」

好きだから、と喉まで出かかってやめた。
頭に血が上っている今の彼には、言ってもきっと信じてもらえない。

「まぁそれでもいいけどな。おまえが俺のモンになるなら」

ぐっと腰を抱き寄せられ、焔椎真の腕に捕らえられた。

「焔椎真くんっ」

誰かに見られたら、と夕月が言うより先に顔が近づいてきた。

重なる唇。
胸板を押し返す腕から力が抜けていく。

「はぁ……ん、ん」

舌が絡まるキスに変わる。
じわじわと身体の中心に熱が集中していくのがわかった。
それを知ってか知らずか、シャツ越しに胸の突起に触れてくる。

「あっ……そこ、だめ」

「感じてんだ?」

「焔椎真くん、僕の部屋で」

「ああ」

すっかり熱っぽくなった夕月の瞳を焔椎真は満足げに見つめた。

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