〜Another Moon,Other Stars〜 無印編

□銀水晶はどこに!?瞳はダイヤモンドの輝き?
3ページ/7ページ

 “・・・セレネ・・・愛しい・・・セレネ・・・”

突然、紗織の意識にどこからともなく呼びかける声がした。

「どうしたの、紗織?まだ、気になることがあるの?」

「・・・・誰?今、誰か、呼んだような・・・」

「何も聞こえないよ、きっと気のせいだよ」

「そう・・・ね、多分。気のせいよね・・・」

誰かに呼ばれた感じがしたがシルフィに諭されて紗織は我に返った。

夢で誰かが呼びかけることはあったが紗織がセーラー戦士になってからは夢もあまり見なくなったし、ましてや日常の中で誰かの声が聞こえたのはこれが初めてだった。

「さてと、少し時間が早いけどミカと合流するか。早め早めで動かないとミカの場合、すぐ時間が来ちゃうんだから」

「そうなの?ミカちゃんってそんなにルーズなの?」

「もうね、私がいないと平気で同じ店に4,5時間は居座ることもあるの。小学校のときは日が暮れて親に迎えに来てもらったこともあった位。この集中力をもっといい方向に使ってくれればいいんだけど」

いつになく愚痴っぽくなったことに気がつき紗織は慌てて理性を働かせる。

ひとまず、博物館を出てミカが出向いた街の方へと足を運ぶ。

紗織と入れ違いになって博物館へと入っていく影がひとつ。

博物館の奥へと忍び込んだことをこのとき誰も知らなかった。

「お待たせ、ミカ?何かいいもの見つかった〜?」

「う〜ん、あんまり。今日は期待はずれ。紗織の方こそどう?」

「う〜ん、こっちもあんまりってとこかな?私、やっぱり宝石とかあまり興味なかったから・・・」

「よく言うわよ、その美貌があれば安い宝石だって光って見えるわよ?」

「お世辞はよしてよ、こう見えて私だっておしゃれはしたいものだから」

「じゃあ、一緒に買い物、付き合って。まだまだ探したりないんだから」

「はいはい、時間と予算オーバーには気をつけてよ」

博物館での探し物よりこれからミカに付き合うほうの時間が遥かに長いことを初めから覚悟していた紗織は念には念を押してミカに釘を刺しておいた。

聞く耳を持っているかどうかはさておき、紗織自身もとにかく一度落ち着いておきたかったのは事実である。

気の知れた友達といるだけでも十分な息抜きになる、それは紗織とミカの付き合いの長さから考えれば当然のことだった。

だから、何だって話せるしどこへだって付き合っていける。

これから何が起こるか分からない身となった紗織にとってはほんの些細な時間も大切にしておきたい、心のどこかで実感していることであった。

「さてと、あまりいいのはなかったけどそろそろ帰るか?」

「OK、いつもよりは少ない買い物量だったけどたまにはいいでしょ?」

「アハハ、また今度リベンジしてやるんだから!」

「ミカったら懲りてないな〜」

普段より少なめとは言いながらも両手にしっかり買い物袋を持ち、帰路へと向かう紗織とミカ。今日1日も無事に終わろうかと思ったその時・・・

“セレネス、博物館が・・・博物館へ・・・”

(まただ・・・誰かが私を呼んでいる?博物館へ・・・行けってこと?)

「どうしたの紗織?何か忘れ物、した?」

「え〜と、ごめんミカ。博物館にハンカチ落としてきちゃったかも。先に駅で待ってて!」

「ちょっと、紗織・・・急にどうしちゃったの?」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ