〜Another Moon,Other Stars〜 R(魔界樹〜ブラック・ムーン編)

□放課後にご用心!狙われたうさぎ
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 『Dear Mom.

この前、高木さんのお手伝いでお芝居をやったんだけど白雪姫を演じるはずがセーラー戦士と化け物の戦いなんてとんでもないものになってしまったよ

お客さんはみんな大喜びだったんだけど一生懸命練習した私達の努力が無駄になったことが心残り

こんなことならば化け物退治の練習をした方が良かったかも、って私は思ったんだけどこれって変かな?

From 紗織』

「これでよし、と」紗織は寝覚めのコーヒーを口にしながら1日の日課を終える。

「それにしてもあの時のミカちゃん、相当嬉しそうだったんだね。貴女がキスした途端気絶しちゃうなんて」

「あれから顔を合わせる度にあのときのことの愚痴ばかり聞かされるから、大変なんだよ。昨日も早く寝たかったんだけどおかげ様で私は寝不足」

「紗織はいい人だから絶対遅刻とかありえないんじゃない?それは自信を持っていいわよ」

「ありがとうシルフィ、そろそろ学校の時間だから出発しましょう」

紗織とシルフィは十番街への電車に乗るべく家を出発する。

いつも通りの時間ならば余裕を持って間に合う時刻である。ミカと話すことが出来る時間は先に紗織が電車に乗る都合があるためほんの10分程度である。

今日も駅でミカと一緒にそれぞれの電車を待ちながら何気ない話を交わしている。

「そうそう、この前のセレネス様のお芝居、どうやら動画が公開されているらしいわよ?早速見たんだけど画質が悪くてもう最悪。セレネス様のお美しい姿を汚さないで欲しいものだわ!」

「まあまあ、動画なんて思うような画質で見られるものじゃないから仕方ないんじゃない?私も時間があったらもう少し綺麗な画質のを探しておくからさ」

「頼むわ紗織、頼りにさせてもらうわね・・・ところで、この前ちょっと変なことが起こったんだけど聞いてもらえる?」

「何かな?セレネスさんの件?」

「違うの、月影の騎士って人が現れたとき『月の天使事件』以降ずっと持っている栞が変な光を帯びていたの。あれって一体・・・?」

「栞が光ったの?その場にいたわけじゃないからさっぱり分からないんだけど・・・」

ミカが抱いた疑問に紗織は上手く応えることが出来ない。月影の騎士を認識できるのは自分だけであるはずだが『月の天使事件』で自分の背中から零れ落ちた羽根の一部が今こうしてミカの手元にある。

一種の魔力を帯びたものであるならその加護のおかげで光っていたというのなら納得できるが月影の騎士が現れたと同時に光りだしたという点が腑に落ちない。

仮に月影の騎士の呼び水となったならばそれは月影の騎士とプリンセス・セレナに何か因果関係があるということの証明にもつながる。

そしてそれは同時に自らの変身時間が限られてしまったことと関係があることにもなる。ほんの少しの結論が導き出せれば全ての謎が解けるところまできている。

紗織はミカの話に耳を傾けながらも自らが解決するべき問題点をじっくりと洗い出していく。

紗織が思案をめぐらせているうちに今日は何故かミカの乗る電車が先に到着する。

「おかしいな・・・いつもなら紗織の方が先に乗ってなきゃおかしいのに。ま、いっか。行ってきま〜す!」

「はい、今日も1日頑張ってね!」

いつもならミカに送り出される立場の紗織だったが今日は逆にミカを送り出す立場になる。

すぐさま紗織は駅員に電車の遅れのことを尋ねようとしたがすぐに構内にアナウンスが流される。

『港区方面行きの電車は事故により到着が遅れております。ご迷惑をおかけしますが何卒ご了承下さい』

「事故か・・・とりあえず学校に連絡しておこう。多分、桜田先生はもう到着しているはずだし」

紗織はすぐに携帯電話を取り出すと十番中学校に電車が遅れているため遅刻するかもしれないと連絡を入れる。

(紗織・・・もしかして、遅刻しそうなの?)

(分からない。でも、訳を話せば桜田先生ならば理解してくれるはず)

(それにしても事故だ何てついてないな・・・嫌な予感ではないんだけど)

紗織は足元に置いたベースケースを改めて持ち直すと電車が到着するのを待っていた。
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