〜Another Moon,Other Stars〜 R(魔界樹〜ブラック・ムーン編)
□すれちがう愛の心!怒りの魔界樹
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『Dear Mom.
この前、うさぎちゃんと夏美ちゃんがあるきっかけで居残り勉強をすることになったんだけどそのときにまた化け物が現れたの
私達が何とか退治して事なきを得たんだけどそのときに家にいたはずのミカが突然私の前に現れてミカも私も何が何だか分からなくなったわ
さらにもう1つ付け足すとその時のミカは明らかに別人と思えるほど豹変していて余計に混乱することになって・・・
一体何が起ころうとしているのか分からない、私達の身の回りで何か嫌なことが起ころうとしている前兆なのかな?
From 紗織』
「ひとまず、これでよし」
紗織はママへの定期メールを送信するが終始、表情が晴れないままだった。
無理もない、いきなり現れたミカは別人と見間違うばかりの威圧感に包まれて紗織に対して何かを告げようとしていたから。
だが、突然正気に戻るとミカ自身も困惑しきった表情で何が起こったのか見当も付かず途方に暮れていたのだから。
あの一件以来、ミカはセーラーセレネスの話題に極力触れないように態と遠ざけているのも事実だった。
紗織もそんなミカを不憫に思いミカに気を遣って自分からも話を出さないように神経を使っているほど。
「もう少し、ミカちゃんから話が聞ければ何か見えると思うんだけど・・・肝心のミカちゃんは何も覚えていないから無理に話させるのは酷なのよね」
「うん、以前みたいに携帯に連絡しても出ないほどひどいものではないのは救いだけど・・・それでもミカが心配だわ」
「紗織は優しいプリンセスだから」
「シルフィ、君って子は・・・!」
シルフィからプリンセスと言われて紗織は照れ隠しにシルフィに少し強く当たる。ふと、紗織はあることを思い出す。
ミカが十番中学校に飛ばされたときその手の中には『月の天使事件』で紗織=プリンセス・セレナの背中から離れた白い羽根の栞が握り締められていた。
ミカはプリンセス・セレナである紗織の危機に反応して現れたのか、あるいは月影の騎士が導いたのか。紗織は2つの仮定を同時に思い描く。
(全てを証明する為に欠けている物、私自身に欠けている物、あるいは・・・)
しかし、どちらの仮説も証拠が少なすぎて結論を導き出すには不十分なままである。紗織は外を眺めながらもう少し、何かが足りないことを痛感するのであった。
「さて、今日はミカと一緒に出かける予定だからそろそろ行くか」
紗織はミカを連れて十番街へ行く約束をしていたため、ミカの家へ足を運ぶことにした。
(はぁ〜あ、せっかくの休みだってのに世の女の子はこんな美少女を放っておくのかな〜?)
うさぎは1人、繁華街を目的もなくうろうろしていた。せっかくの休みなのに色恋沙汰もなく平凡なままで終わることがうさぎには我慢ならない様子である。
(うさぎさん・・・今日という今日こそはうさぎさんの愛を奪ってみせる!)
うさぎの背後には誰に気付かれることもなく星華が陣取り一定の距離を保ちながらうさぎの後ろについていく。うさぎは星華に気付くことなくそのまま歩を進めていく。
ある書店の一角で紗織とミカはそれぞれにお目当ての本を読みふけっていた。紗織はギター用のスコアブックを、ミカはファッション雑誌を熱心に読んでいる。
(今日という今日は絶対、絶対に久保さんの愛を奪い取ってみせますわ)
紗織の背後では夏美が恋愛の本を片手に紗織の様子を伺っている。紗織が買おうと思ったスコアブックを左手に持ちレジへ向かおうとしたのを見透かして夏美が紗織に話しかける。
「あら、久保さんじゃございませんこと?」
「夏美ちゃん!どうしてここに?」
「まあ、こんなところで会うなんて偶然ですわね」
夏美が紗織の右腕を掴むと周囲の客の視線が一斉に紗織と夏美の方に集まる。ミカは何が起こったのか様子を見に行くと困惑しきった紗織と満足そうな夏美の姿があった。
「夏美・・・貴女何やってるの!?」
一方、うさぎは星華に誘われてあるカフェに立ち寄っていた。2人は向かい合って座りドリンクを挟んで何かを話し合っている。
「うさぎさんにこんなところで会えるとは思わなかったわ」
「あたしも〜」
うさぎはクレープを食べながら自分も、と言っている。
「こんなに大勢の人がいて偶然めぐり合うなんてまさに奇跡ね」
「ほんとほんと」
2口目、3口目とほおばりながらもうさぎは星華の話に相槌を打っている。そこへ騒々しい声が聞こえてきたかと思い2人はその方向を見るとミカに引っ張られる夏美と必死に制止する紗織の姿があった。
「さあ夏美、白状してちょうだい。紗織に何をしようとしたの?」
「離して下さい、貴女なんかに関係ありませんわ」
「関係ある!あたしは紗織と遊びに来ただけなのにいきなり紗織にべたべたして!」
「ミカ・・・恥ずかしいからもう止めてよ〜」
ミカと夏美の騒動に巻き込まれて紗織は今にも顔から火が出そうな状況である。うさぎも星華もその様子を目の前にしてそれぞれの立場で3人を止めに入る。
「あ・・・うさぎちゃん・・・これは・・・その・・・」
「星華お姉様!月野さんと一緒だ何て貴女の方こそ人のこと、言えますの?今日は図書館に行くとか言ってませんでした?」
「そっちこそ、友達の家で勉強するとか言っていたじゃない?」
銀河姉妹が鉢合わせたことによりさらに騒動に拍車がかかってしまい紗織にも収拾が付かない状況に陥ってしまう。
せめてもの救いはがっくりと肩を落とした紗織を慰めてくれたのは他の誰でもないうさぎだったことである。紗織の気苦労を察して気遣ってくれたことを嬉しく思う紗織であった。
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