〜Another Moon,Other Stars〜 R(魔界樹〜ブラック・ムーン編)
□天使?悪魔?空から来た謎の少女
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『Dear Mom.
とうとう私達はセーラー戦士の支援組織を結成することになったんだよ
名前はWhite Swear(気高き誓い)、いい名前でしょう?
当面のメンバーは私とミカとバロンドールのオーナーの高木さん、リーダーは特に決めていないけど高木さんが名前を貸す形で代表を務めることになったの
これから先、どんなことが起こるか分からないけど私達の想いが多くの人たちに伝わりますように
From 紗織』
「これでよし、と」紗織はママへの定期メールを送信し終えると一息ついてコーヒーカップを口にする。
つい先週、セーラー戦士の支援組織『White Swear』を設立することになったばかりである。当面の活動は十番街の警戒や付近で起きている事件の調査やセーラー戦士の活動報告を主体とする自警団的位置づけである。
十番中学校に通う紗織が十番街と住む街の周辺警備を、ミカは紗織と高木のパイプ役としてホームページでの活動報告の更新を一手に担う形で活動を始めた。
一方、高木はというと自分はもっぱら仕事が忙しいため自由行動こそできないが2人とセーラー戦士の(主に食事面での)バックアップを主体として活動することになった。
「でも、貴女がセーラーセレネスだと知ったときのミカちゃんの表情・・・ちょっとだけ寂しそうだったわね」
「今までずっと黙っていた私も悪いんだけどね。それでも、ミカはちゃんと分かってくれたからありがたい限りよ」
紗織は自らがセーラーセレネスであったことを先の戦いで打ち明けると同時にWhite Swearとしての活動を始めるきっかけを作り出すことができたことを振り返る。
その一方、ミカが地球の巫女の宿主であったことはあえて黙っていることにした。ミカ自身もただならない事態に巻き込まれている状況ゆえ、これ以上混乱させるわけにはいかない紗織なりの配慮である。
「いざ、活動を始めたとはいっても化け物相手は例の戦い以来一切なし、敵の正体もまったく分からないまま終わったのは心残りね」
ついでシルフィが先の戦いにおいて現れた敵の正体について思案をめぐらせるがどうにもピンとこない。ダークキングダムの類ならばシルフィにも一日の長があるものの魔界樹との戦いまでは予測してなかったため半ば手探りの状態での戦い続きだった。
今後もおそらくそういう戦いを強いられるのだろう、これからはWhite Swearとしての活動と日常生活の繰り返しになることを自覚する紗織であった。
「ルベウス様、これごときが21世紀の十番街という都市なのですか?」
どことも分からないある部屋で5方向に空いた窓ガラスから階下を眺めながら何かを話し合う5人の女性。
5人それぞれの髪型と容姿の違いこそあれ、5人に共通していたのは額に上下逆さまの三日月の紋章が浮かんでいたこと、そしてその三日月の色は漆黒に染まるものだった。
「フ・・・思ったとおり21世紀の段階では未発達の街のようね」
ルベウスと呼ばれた女性が部下の一人と思われる仲間に十番街の様子を見せて何かを話し合う。次いで部下の口から出た単語は・・・
「一刻も早く銀水晶を探し出し、叩き壊しましょう!」
「まあそう慌てないで」
銀水晶のことを口にした部下の一人の発言から彼女たちの目的が銀水晶にあることははっきりしたがルベウスは部下の提案に待ったをかける。
「先に“ラビット”を見つけ出して殺して差し上げるという案もありますわ」
ルベウスの部下と思われる水色の髪の女性が口に出した単語は『ラビット』、どうやら特定の人物をさす隠語の類だと思われる。その『ラビット』と呼ばれる人物も彼女たちの目的のひとつであることも浮き彫りになった。
「ふむ・・・よし、まずは“ラビット”を見つけ出し、抹殺するとしよう・・・」
部下たちの提案を精査したルベウスは『ラビット』と呼ばれる人物の抹殺を第一目標にすえることを決定し、部下に伝える。
後にルベウスたちがいた部屋は実は水晶状の飛行物体でその存在は数多くの目撃証言とともにインターネットで話題となったことを付け添えておこう。
これが後に呼ばれる『ブラックムーン事件』のすべての発端となることはまだ誰も知らなかった・・・
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