〜Another Moon,Other Stars〜 R(魔界樹〜ブラック・ムーン編)

□銀水晶を求めて!ちびうさの秘密
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 『Dear Mom.

この前、高木さんの意外な過去が分かった驚いたよ

実は高木さんは高校時代にプロレスに熱中していたんだって

私もみんなに黙っていたプロレス好きがばれて恥ずかしかったよ・・・

もう格闘技は見るだけだ、と言えなくなったのはいいことなのか悪いことなのか・・・

とにかく隠し事は長く続かないな、って自覚したわ

From 紗織』

「これでよし、と」紗織はママへの定期メールを送信するとパソコンの電源を切って出かける支度をする。

「紗織って見た目に似ずいろいろなことを知ってるってのは良く分かってたつもりだけどまさかプロレスをこっそり見ていたなんて」

「シルフィ、お願いだからもうそれは触れないで」

紗織は顔を真っ赤にしながらシルフィに自分の隠していたことに触れないよう懇願する。

「冗談よ、冗談。それでも貴女は出会ったころから色々と分からないことがあったから・・・まだまだ貴女も私の知らないことがあるでしょう?」

「ま、まあ、それは一理あるけど・・・君の言うことは今回だけは聞けないわね」

「でも、高木さんも意外な一面を見られたのも事実よね。あんな風貌でプロレスやってたなんて」

「それは正直驚いたわ。怪我のために夢を諦めざるをえなかったのは辛かったでしょうけど高木さん、満足そうな顔をしていたのよね」

紗織は続けて思わぬ形で知ることになった高木の過去について考える。志半ばで夢を断たれたものの今はああいう形で満足そうな日々を送っている。

自分もその一助を担っていけるのならば出来ることは精一杯したいと紗織は思っていた。

「そう、ところで今日持っていくのはギター?ベース?どっちかな?」

紗織は極力話題を遠ざけるような言い回しで何とかこの場を乗り切ろうとしたのを見てシルフィも勘弁したのか紗織にはそれ以上話すことはせずに話を転換する。

「今日はね、ギターを持っていくの。今日は晴れているから心配なく持っていけると思うからね」

紗織は久しぶりにバロンドールの一室を借りてギターの練習をすることにしていた。ちびうさにも一度聞かせてあげたいと思っていたところで絶好の快晴に恵まれたことを機にちびうさに自分のギターを聞かせることを思いついたのだった。

だが、紗織はいつもなら必ず確認するはずの天気予報を確認していなかったことをシルフィも見逃していた。これが後に大きな波乱を呼ぶことも知らずに・・・



ここは異空間、ルベウスと妖かしの4姉妹の本拠地となっている空間である。その異空間内ではベルチェが空間内を暑がり、他の姉妹達も互いのほうを見ることなく思い思いに自分のしたいことをしている様子である。

「どう、この口紅?この色、死人の色を巷に流行らせたいと思うのだけどどうかしら?」

「黒は闇の色、黒はお葬式の喪服の色、黒は汚れを塗した色」

ペッツの提案にベルチェが賛同する。ベルチェは素敵だとつぶやきながらペッツの唇を指でなでて漆黒の口紅の感触を確かめる。おだてられていい気分になったペッツは勢いに任せてベルチェの頬にキスマークをつける。

「いやいや、このリボンで世の女子どもを虜にしてやりたいわね」

「いえいえ、金色はまぶしすぎますわ、それからカラベラスお姉様。マスカラが濃すぎるわ」

「ちょっとコーアン、貴女末っ子の癖に生意気言わないで!それに貴女のお洋服、暑苦しくてお肌が荒れてない?」

コーアンにファッションセンスを侮辱されたカラベラスは思わず売り言葉に買い言葉で反論を始める。コーアンもその喧嘩に乗ったと言わんばかりに再反論を始める。

「まあ、ひどい!ひどいわカラベラスお姉様!」

「貴女達、姉妹喧嘩は止めなさい!」

ルベウスが見るに見かねて4姉妹を一喝してたしなめる。続けて今自分たちがなすべきことが何なのか再確認させる。

「ファッションなどに現を抜かすよりも『ラビット』をおびき寄せるいい案が浮かんだわ」

ルベウスの考えた作戦に興味津々の4姉妹は口を揃えて何なのか尋ねてくる。ルベウスは自信満々に『ラビット』=ちびうさに関するある事実を告げる。

「確か『ラビット』は雷が大嫌いだったはずよ」

ルベウスが指摘した事実を耳にしたペッツは自分が名乗りを上げてその作戦を実行する役割を引き受ける。

「分かりました・・・雷鳴を響かせれば『ラビット』は恐怖のあまりエナジーを開放するはず、ですよね?ルベウス様」

「その通り・・・」

ルベウスは特別な表情を見せることなくペッツに作戦を任せる。ペッツもまた自分の部下に今回の作戦にふさわしいドロイドがいることをルベウス初め他の姉妹達に告げると鏡を受けて21世紀の十番街へと出向く。
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