〜Another Moon,Other Stars〜 R(魔界樹〜ブラック・ムーン編)

□白いバラは誰に!?月影の騎士登場
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 塾の近くの川原で塾帰りの生徒がカーディアンに襲われていた。

カーディアンは一言吼えると生徒からエナジーを奪い取ろうとしていた。

まことがすぐ生徒の下に近づくが生徒はまことの身の危険を案じて来るな、と注意する。

カーディアンがまこと達に襲い掛かろうとしたとき、生徒がまことを抱いて庇ったものの生徒は勢い余って転落してしまう。転落した拍子に頭を打ち付けたのか血を流している。

うさぎと亜美がカーディアンに気付きまことを呼ぶとカーディアンは空に浮かぶ紋章のようなイメージの中へ消えていった。まことはすぐさま落下した生徒の下へ駆け寄り安否を確認する。

生徒の名前は篠崎といい、まことは「篠崎さん!」と何度も呼びかけるが反応が全くない。

すぐさま救急車を呼んで病院へ運び込まれたものの輸血が必要な状況と分かる。

しかし篠崎の血液型であるO型の血液が足りず、手配するよう慌しく動く医者の姿があった。

まことは自分がO型だったため、自分の血液を使うよう医者にお願いし、すぐさま輸血作業に入った。



時を同じくして、場所は十番オデュッセイア。

魔界樹がひそかに生息する一室でエイルの笛の音がこだまする。

笛の音に呼応して先ほど篠崎を襲ったカーディアンが魔法陣の中から奪い取ったエナジーを魔界樹に注ぎ込む。

エナジーを受け取った魔怪樹は一気に活力を取り戻し、実を付けていく。実からこぼれるエナジーの雫の加護を受けるエイルとアン。

カーディアンはカードの姿に戻るとエイルの手元に収まる。

「人の幸せは幸運を紡ぎ出す糸車、巡り巡る運命の歯車は誰にも止められないわ」

「これで今日1日、無事に生き延びることが出来ましたわね。楽勝ですわ」

「しかしアン、安心は出来ないわ。セーラー戦士と名乗るあの美しき・・・」

「美しき!?」アンににらまれたエイルは前言を飲み込んで言い直す。

「恐ろしき敵が6人も現れたのよね、注意しなくては」

「この地上で私達以外は全て敵・・・」

「そう、地球の人間共に正体がばれぬよう気をつけねば・・・」

「エイルだけが味方ですわ」

「私もよ、アン」

エイルとアンは互いの手を握ると、抱き寄せ合い、キスを交わす。

強く、強く、抱きしめあったまま・・・



病院ではまことの血液を篠崎に輸血する作業が続いていた。篠崎の容態を気遣うまこと、そんなまことを心配するうさぎと亜美の姿もあった。

「まこちゃん、大丈夫・・・?」

「貧血を起こしそうになったら代わるわよ?」

「ありがとう・・・明日は試験だから2人とも先に帰って」

まことが帰って試験勉強をするようお願いするが亜美は慌てていないとこれを丁重に断る。

対照的にうさぎは今更慌てても、と諦め顔でまことを心配している。

「まこちゃん、篠崎さんってどういう人?」ふと、亜美が篠崎のことについて質問する。

まことは一言だけ「大事な人」とだけ答える。その一言を聞いて不安がるうさぎと亜美・・・

「振り向くと、いつもあたしの側にいてくれる、そんな人」

更に話を続けるまことの脳裏に蘇る遠い日の思い出・・・何人目かの恋人に振られたときのこと、降りしきる雨の中、まことと篠崎が公園の一角で雨宿りをしていたとき、篠崎が何も言わず傘を差し出してくれた時のことが思い起こされる。

小さなときから楽しいとき、苦しいときを一緒に過ごしてきた、長い付き合いをしているからこそ語れる思い出の数々、今日もカーディアンの攻撃から身を挺して庇ってくれたことにまことは深く感謝していた。そんなまことにうさぎはふと思ったことを話す。

「まこちゃん、ハートで恋してるって奴?」

「違うよ。でも、恋人なんかよりもずっと、ずっと大切な人かもしれない」

まことは頬を赤くしながらもうさぎの質問にはっきりと答える。
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