〜Another Moon,Other Stars〜 R(魔界樹〜ブラック・ムーン編)
□狙われた園児!ヴィーナス大活躍
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「どいて、どいて、どいてー!」
美奈子が勢い良くジャンプしてスカートを押さえながら何とか着地する。
しかし、着地点にいたアルテミスは美奈子の下敷きにされ、何とか顔を出して一息つく。
一息ついたところで目の前で何かの話し声が聞こえてきた。
「ほらほら、そのバッジちょうだい、早く!」
1人の園児を囲んで5,6人の児童が何かを催促しているような光景だった。
後数歩というところまで児童が迫っている、間一髪で美奈子が駆けつけて、叱り付けるとどこかへ走って逃げて行った。
もう大丈夫よ、と美奈子が園児に声をかけると泣くのをやめる。
「美奈子ちゃん、どうしたの?何かあったの?」
「ああ、紗織ちゃん、おはよう。今さっきいじめっ子がこの子にイタズラしてて」
「イタズラ!?弱いものいじめは許せないわ」
紗織も事情を聞くといじめに対して憤りを感じずにいられなかった。
「助けてくれてありがとう」
園児が笑顔でお礼を言う。どうやら嘘泣きをしていたようだ。
「ねえ、お姉ちゃん。助けてくれたお礼にバスまで連れてって」
「今それどころじゃないのよ」
「連れてって」
このやり取りがしばらく続くと今度は本当に泣きそうになる。
「分かったわ、ところで幼稚園バスはどこに来るのかな?」
紗織が園児に尋ねると美奈子が園児を抱きかかえて猛烈ダッシュでバスの待っているところまで連れて行った。あまりの足の速さに紗織は言葉を失う。
「ねえ・・・アルテミス、美奈子ちゃんっていつもああいう感じなのかな?」
「多分・・・」
紗織の質問を一切否定せずシルフィはただ頷くだけ。
美奈子のおかげもあって園児は無事バスに間に合うものの、肝心の美奈子は明らかに遅刻する寸前だった。ダメ元でまた学校へ向けて全力で走りだす美奈子の前にうさぎの姿が見えた。2人とも全力で走って行ったが・・・遅刻だった。
うさぎは「私は遅刻常習犯です」と書かれた札を首からぶら下げて次の休み時間まで立たされるハメになった。自分と同じように遅刻していないか美奈子を心配するうさぎの元に星華が近寄る。
「うさぎさん、憂いに満ちた瞳・・・実に綺麗ね、惚れ惚れしちゃうわ。さあ、悲しみを越えて私の胸の中で全てを語り合いましょう」
とうさぎに訴えかけていたが目の前に夏見がいたことに気付く由もなかった。
「何をなさっているの、星華お姉様!?」
ちょっとしたウォーミングアップを、とジョークでごまかそうとする星華だったが誰の目から見ても明らかにうさぎに対する施しをしようとしていた。
ごまかしながら廊下を歩いていく星華をみてうさぎは変な姉妹、と思わずにいられなかった。
休み時間、次のエナジー獲得の作戦を練る星華に話をごまかすな、と抗議する夏美。
うさぎを気にしすぎることがどうにも不愉快な夏美は思いのたけを星華にぶつける。
「勘違いしないでよ夏美、これも作戦のうちだから」
「どんな作戦なんだか・・・とにかく、今回は今までよりうんと若くて新鮮なエナジーをいただくことにしましたわ」
銀河姉妹はちょっとした小競り合いこそしたものの次の作戦について同意したようだ。
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