〜Another Moon,Other Stars〜 無印編

□もう1つの銀水晶!2人のプリンセス
2ページ/9ページ

 紗織とミカは通学の電車の中で何気ない話で盛り上がる。

「それでさ、大変だったのよ。紗織なら分かってくれるよね?」

「・・・・あ・・・うん・・・」

「あ〜、紗織ったら人の話聞いてないな〜?お〜い、聞こえたら返事しろ〜」

「あはは、ゴメンゴメン。つい、考え事を・・・」

「考え事?この前の花嫁教室のこと、まだ引っ張るの?あれはセレネス様とセーラーVが命を懸けて助けてくださった結果、あの奇跡が起きたのよ!」

「奇跡ね、確かにあれだけの被害が出てたのにミカにケガがなくてよかった」

「紗織だってそうじゃない?今頃入院してたかもよ?」

「う、うん・・・とにかく、気をつけないといけないね。何かと物騒だし」

「OK、と言いたいけど紗織は考えすぎ。そんなんじゃお昼まで持たないぞ?」

「ありがとう・・・ミカ、ちょっと気が楽になった」

話が一区切りしたところで電車が駅に着く。

紗織達は電車を降りて学校へと向かう。



午前の授業は無事に終わり、紗織は事件のことを忘れて授業に打ち込んだ。

そして午後の授業、体育の授業はサッカーだった。

人数が20人いたのでハーフコートを使って10人制の試合を行うことになった。

大抵、授業のサッカーは思い思いに陣取って自由に動き回るがスポーツ万能な紗織を運良くチームに引き抜けた側は必ずと言っていいほど紗織に司令塔の役を任せることが多い。

事実、紗織は自分以外のメンバーを生かすのが天才的に優れていたため、一時期紗織はハーフラインを出てはいけない、と言う暗黙のルールが成立しかけたことがあったほど。

「勝ち負けは問わず、しっかり動きましょう」とメンバーに結束を促す紗織。

その日も授業内での試合が始まった。

今日は互いにシュートを打ち合うもなかなかゴールを割らない展開が続き、紗織も周りの動きを見ながら巧みなパスで試合を上手くコントロールしていく。

しかしその脳裏では別のことを考えていた。そう、この前の事件のことだった。

(私はあの時、怒りに身を任せて力を使ってしまった・・・結果的に全員怪我もなく無事で済んだけど、建物の窓ガラスが全部割れるほどのものだった・・・あれを私がやったのだとしたら、私は・・・)

頭の中を事件のことがよぎって授業に集中できずにいた紗織は飛んできたボールを受けようとジャンプする。

しかし、次の瞬間、後ろにいた相手と交錯して傾いた体勢のまま右足だけで着地してしまう。刹那、右足に激痛が走り紗織はその場に倒れこむ。

「ちょっと・・・久保さん!?ストップ、ストップ!誰か、保健室へ!」

その様子を見た先生が大慌てで紗織の元へ駆け寄り、どこが痛いか痛がる紗織に尋ねる。

紗織は口で説明せず左手で足首の部分を指差して痛がったまま起き上がれない。

ようやく、他の生徒がタンカを用意して保健室へ紗織を連れて行く。

その様子を見ていた生徒全員が紗織の身を案ずる。

目の前で起きた事故に動揺し、試合が成立しなくなり、これはまずいと判断した先生は自習を言い渡すと一目散に保健室へと向かう。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ