〜Another Moon,Other Stars〜 無印編

□親子の絆!未来への胎動
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 翌日、休み時間中に紗織はミカ達と机を囲んで何気ない話をしていた。

話の中心はミカのセーラーセレネスに対する話だった。

「それでさ、またセレネス様が悪い奴をやっつけたんだって。聞いたところによると何かの魔法の石の力を使ったとか何とか。セレネス様の新しい力、この眼で見たかったな〜」

「ミカもかなりミーハーね、でも待てばきっとセーラーセレネスが駆けつけて助けてくれるわよ?何なら自分から化け物の方に近づく?」

「それは勘弁、もうあんな思いは沢山!」

あははは、と笑い声が漏れる中、紗織はただただ頷くだけだった。

「紗織は魔法の石のこと、どう思う?」

紗織はふと考え事をし始めて話が耳に届いていない」

「・・・紗織?ねえ紗織?」

「あ、ごめん・・・何の話だった?」

「もうちゃんと聞いてよね、セレネス様が見つけたという魔法の石の話よ!」

「魔法の石か・・・う〜ん、魔力を帯びた石ならば昔からダイヤモンドは魔除けに使われた、って話をよく聞くんだけどな〜」

「ほうほう、紗織はさすが博学者ね〜。私達とは段違いよ」

「あれ?私、おかしなこと言ったかな〜?」

「全然」とミカがその後に何か言おうとしたところでチャイムが鳴る。

その日の帰りのHR、以前提出するよう課されていた進路についての用紙を全員が提出し、先生の話を終えて1日の日程を終える。

紗織達が教室を出ようとしたときに担任の先生が紗織を呼び止める。

「あ、久保さん。今、少しいいかしら?何か予定が入ってるかな?」

「はい、特に何もないですが・・・何かありましたか?」

「ここで話すのもなんだから・・・職員室までいいかしら?」

「分かりました、すぐ行きます」

「紗織だけ呼び出し?何も変なことしてないでしょ?」

「うん、心当たりがないけど・・・悪いけどミカ、待っててもらえる?」

「OK、校門の前で待ってるね」



紗織はミカを送り出し、担任の先生に言われたとおり職員室へ向かう。

「お待たせしました先生、私を呼んだのはどうしてですか?」

「久保さん、進路表についてだけど・・・転校したいって、何か嫌なことがあるの?悩み事だったら相談に乗るけど?」

「あ、はい・・・実は・・・」と紗織は言葉を濁らせる。

「久保さん、実はね、最近貴女の様子がおかしいって他の生徒や先生も心配しているのよ。特にこの前のサッカーのケガにしたって考え事をしていたらしい、って変な噂が上がってるし」

「それは・・・あの・・・」と何か言おうとする紗織だがまた黙り込む。

「久保さん、貴女は他人思いのとてもいい子だけど周囲のことを気にしすぎて自分を押し殺しちゃいないか、とても心配なの。

貴女が転校したい、って言い出したのもそんな環境に限界が来たからその現実から逃げ出したい、ってメッセージにも受け取れるし」

「それは・・・そんなこと、ありません・・・」

紗織は俯き、力のない声で先生に返事をする。

「久保さん、まだこんな時期に無理に答えを出そうとしちゃダメよ。本当は返しちゃいけないんだけど・・・貴女だけは特別に、でも出来る限り早めに書き直して返してね」

「・・・分かりました」というと紗織は先生から差し出された進路表を受け取り、職員室を後にする。
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