短編

□旅立ちの言葉
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井戸の中に青空を見たとき、きっともうチャンスは今だけなんだと思った。



【旅立ちの言葉】



みんなに・・・犬夜叉に会いたかった。

きっと飛び込めば会いに行ける。

だけどそれは・・・


家族と・・・離れて、
二度と会えないって事。


会いたいけど家族と別れるのは嫌。
家族と別れたくないけど会えないのも嫌。

そんな中途半端な気持ちだったから今まで井戸は繋がってくれなかったの?


井戸は今

私を試してる?


「かごめ・・・」


後から聞こえた声にびくりと肩が揺れた。

振り返ればママが心配そうに私を見つめていた。


「ママ・・・」


会いたい

離れたくない

逢いたい

離れたく・・・ないよ



でも・・・!



「私・・・」


ママはそっと私の肩を抱いてくれた。

その温もりに涙が出そうになる。


「私・・・ね、好きな人がいるの。」


声が震える。
ママの顔をまともに見れない。


「我が儘で、乱暴で、俺様だけどほんとは凄く優しくて・・・」


視界がぼやける。


「三年間たっても・・・まだ大好きな男(ひと)なの・・・っ!」


家族が大好き

優しいママと生意気な草太、由来好きなじいちゃん、デブ猫のブヨ

みんなみんな大好き

愛してるよ


だけどそれ以上に

私は

あの人を・・・


「愛してるの・・・」


涙が止まらなかった。

今私が言ってることはどれだけママにとって酷なんだろう・・・

私には想像がつかない。


「そう・・・。」


ママは一言そう言った。
怖くて顔が見れない・・・。


「かごめ。」


真剣なママの声。
足が震える。

次の言葉が・・・恐い。


「顔を上げて。」

「・・・っ!」


無理矢理顎を引き上げて言われた通り顔を上げる。

すっとママの指が伸びてきて私の涙を拭う。


「馬鹿ね、なんで泣く必要があるの?」


その声は酷く優しくて・・・私はまた溢れそうになる涙を堪えた。


「そこまで愛せる人を見つけられたということはとても幸せな事なのよ?」

「・・・うん。」

「会いに行きなさい。かごめの大好きな人に。」

「――!」


穏やかだけれどしっかりした口調でママはそう言った。

井戸の方を見る。
飛び込めば・・・会える。

ずっと

あいたかったひとに


私は一度ママの方に向き直る。

女手ひとつで育ててくれたのに、私は何一つ恩返し出来なかった。

『ごめんなさい』というべきなのか、『ありがとう』というべきなのか・・・

想いが溢れて

言葉が見つからない。


「ママ・・・」

「行ってらっしゃい、かごめ!」


まるで学校へ送り出すみたいに、ママはそう言った。

いつもの明るい笑顔で

つられて私も笑顔になる



言葉が見つかった。


「行ってきます!!」


そう言って私は井戸に飛び込んだ。





えんど


――――――――――

犬かごちゅーか
ママかご→犬って感じですかね?

家族愛、母親の愛情がテーマかな。

いちおー「甘」の分類なのにシリアスですみません

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