長編

□Last Smile
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あなたのあの目を見たとき

全てを悟ってしまった

嗚呼

あなたはもう・・・

決めてしまったんだね――



ならば せめて

最後は

あなたが好きだと言ってくれた

笑顔で――・・・






【Last Smile】





「かごめ・・・。」



会いに行こうとしていた相手がすでに井戸に座っていた。
井戸に座ったかごめの髪を風が優しく凪いでいく。
犬夜叉は一瞬その姿に視線を奪われた。



「犬夜叉・・・。」



かごめも犬夜叉に気付き顔をあげた。
その表情にいつもの優しい笑顔はなかった。



――言わなきゃいけねぇ。
あの時言えなかった言葉を・・・。



そう決心してきたはずなのに、犬夜叉は口どころか身体も動かせなかった。



――俺は、桔梗を守るって決めたんだ。
だから・・・



伝えなきゃならない

・・・だけど、口が動かない。
唇と喉が、言葉を紡いでくれない。


犬夜叉はまずは心を落ち着かせようと目をギュッとつむり、ごくりと唾を飲み込んだ。

目を開けた時にはいつの間にかかごめが目の前に立っていた。
もう一度唾を飲み込み、言葉を紡ぐ。



「かごめ、俺は――」

「・・・うん。わかってるよ。」



犬夜叉の言葉を静かに遮り、かごめは握った右手を犬夜叉の前に差し出した。



「かごめ・・・?」

「だから、四魂のカケラを返しに来たの――」



犬夜叉の目が大きく見開かれた。
開かれた右手には四魂のカケラの入った小瓶。
その右手の持ち主の表情には喜びも悲しみも含まれてはいなかった。

震える手を伸ばす。

――受け取りたくない。
これを受け取ったら最後。
かごめとは、もう会えない――・・・。

しかし、かごめは伸ばされた犬夜叉の掌にあっさりと小瓶を落とした。
自分の掌に落とされた小瓶を見つめる犬夜叉。



「ねぇ、犬夜叉。」

「・・・なん・・・だ?」



どんな表情をすればいいのか分からず、下を見続けながら返事を返す。



「桔梗と・・・話がしたいの。桔梗の所に、連れていってくれないかな?」










案外すぐに桔梗の匂いは見つかった。
少し離れた村の近くの森の中。
薬草かなにかを摘んでいるのだろう。

犬夜叉は森の入口付近でかごめを降ろした。



「ありがとう。少し待っててくれる?」

「・・・ああ。」



犬夜叉が頷いたのを確認し、かごめは森の中へと入っていった。
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