繰り返される生活のなかで、わたしの存在がこの世に何億分の一として同化されてしまう…
そう思うと、とてもちっぽけで、生きる意味を無くしてしまった感じがする。
この所、わたしは変なことを考えることが多くなった。
現実と妄想の世界の区別はがつかないのだ。
今、立っているこの場所さえ底なし沼のような錯覚をみてしまう。
自分がどんどん狂っていくのがこわい。
一晩泣き崩れていても涙はとまるのだとしった。
そして悲しみも心の奥深いところに蓄積されるのだとも。
とりあえずは生きているというところだ。
「みなさん、そろそろ徳信様のお茶時間です。
準備はできていますか?」
声をかけてきたのは三上さんだった。
落ち着いた雰囲気なのに締まりのある姿は自信と誇りを見せていて、少しシワのはいった顔で優しく私たちに語りかける。
ドアを開けたまま皆をもてなす様子は様になって、彼の優しい性格がでているようだった。
わたしのお父さんもそんな風に優しかった……。
胸が暖かくなるのを感じはじめたと同時に、急に冷めていく感情。
わたしは手に持っていた高そうなティーカップを台にのせて、先輩たちのところまで持っていく。
これから徳信様に会えることに胸をわくわくさせているようだ。
可愛らしい声をあげながらぞろぞろと出ていく。
先輩たちの一番後ろにいたあたしの最後まで三上さんはドアを開けていてくださった。
思わず顔をあげれば目が合って微笑まれて、咄嗟にそらした。
そんな自分の失態に嫌悪する。
本来、この一ノ瀬家でこんなひとりの人間のような扱いをうけるのは珍しい。
今だって、数人の先輩たちがチラリとこちらを様子みするくらいだから。
三上さんは少し他の人とは違っていて下のものに最低限の扱をして下さる。
それは三上さんらしいのか同情のまなざしなのか…。
最近人間不信に悩まされている。