12012

□One night.
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「勝てばいいだけさ」


私は一体何度命を賭けてきただろう。
命と金、大事なのがどちらかすらわからない。

だって自分は自分であって他人だから。

表の世界では生きられず、逃げた場所がここだった。
居心地は悪くない。快適愉快だ。

だけど心の穴は塞がらない。
深く深く、底が見えない巨大なブラックホールみたいだ。

光がやってきても消し去ってしまう。
どこか違う世界への憧れ。



その日、初めて負けた。




「勝てばいいだけさ」


相手は皮肉を込めて私に弾丸を突き付けた。
そう、勝てばいいだけだ。
私はそうやって生きてきた。

喉をかわかせたピストルが鳴る。
声もなく崩れ堕ちる塊に私はこう吐き捨てた。



「勝てばいいだけさ」


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天窓から星達がミサを歌う。
誰も救えないと知りながら。
南十字は誰の為に祈るのだろう?
蠍は何のために火を燈しつづけるのだろう?


私は誰に救われる?
何のために生まれたんだ。


私は"負けた"。
本来なら命はもうないはず、だった。
しかし生きている。
また死にそこねた。

本能が、"Wataru"が生きたいとでも願っているのだろうか。
気づけば私の目の前の"勝者"は息をしなくなってしまう。


倒れた巨大な人形からその腕に見合わない時計と銃、そしてクレジットカードを奪う。



カムパネルラ。
私は君のように生きる事はできないらしい。



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sixさん。
重い、ね。

 

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