“―――――大丈夫っすよ、十代目。”

“俺が、ついてるっすから。”
“十代目がつらい時はいつでも俺を頼ってください。”


“ね?十代目。”



言葉が、木霊する。響く。
君はいつでも、俺のことを一番に考えてくれたね。
一番、信じてくれたね。



『信頼の右腕』




「ヴァリアーが?」
声に出したのは沢田綱吉。通称“ツナ”だ。
ボンゴレファミリーの次期後継者となる男である。本人はボスを継ぐ気はないのだがそうなっている。
「はい、なんかすごいうるさそーなビデオが届いたんすけど・・・。」
これは獄寺隼人だ。ボンゴレファミリーの嵐の守護者。自称“十代目の右腕”。
獄寺の手には一枚のDVDディスク。DVDには『ボンゴレへ❤必ず見なさいよ❤ヴァリアー一員より❤』という文字とキスマークがある。
(ルッスーリアだな・・・。)
ヴァリアー側の晴れの守護者・ルッスーリアがかいたであろう文字をツナは眺める。
「リボーンさんにこのDVD預かってて、どうするかは十代目が決めていいらしいっすよ。どうします?」
「え?リボーンは?」
きょとんとするツナに獄寺は「あぁ。」とツナの質問に答える。
「ちょっとリフレッシュするためにイタリアに行ってくるらしいっすよ。」
(何時の間に!?)
どうりで今日はリボーンを見ないわけだ、とツナは思う。
「えっと、じゃあとりあえずそのDVD見てみようか・・・。」
「はいっ。」
ツナの言うことを獄寺は素直に聞き、セットをする。山本も呼び、三人でとりあえずヴァリアーから送られてきたDVDをみることになった。


『うおおおおおおおおおおおいいぃぃぃぃぃ!!!!てめぇ何チンタラしてやがんだぁぁぁぁぁ!!!』


再生ボタンを押した瞬間にスクアーロの声が部屋に響いた。
リモコンを持っていた山本は反射的に音量を下げた。
「っせぇな、こんにゃろう!」
あまりの声のでかさに獄寺が片耳をふさぎながら怒りに満ちる。

『んもうっ!少しは静かにしてちょうだい、スクアーロ!もうビデオまわしてるってば!』
ルッスーリアの声だけが聞こえた。どうやらビデオ係のようだ。
『いよおおおおおし!!!!おいこらクソガキ共ぉぉぉぉ!!!観てるかぁぁぁぁぁ!!!!』
ドアップにカメラに近づいたスクアーロの声は音量を下げた意味をなくした。
『てめぇらヴァリアー達から任務を与える!!』

「!? 任務・・・!?」
驚くツナと同様に獄寺・山本も口をあけている。

『今すぐボンゴレ連中の中から一人だけイタリアに来い!』

その言葉に誰よりも早く「なんだと!?」と反応したのは獄寺だった。
『よく知らねぇがどっかのファミリーが来るみてぇだな!リング争奪戦で人員が足りねぇ!!』
リング争奪戦――――、それは次期ボンゴレボス決定戦のことだ。
そういえばルッスーリアやスクアーロは大怪我してたような気がする。
だが現に目の前にはピンピンしたスクアーロがいるのだが。
『俺は余裕なんだがなぁ、ルッスーリアのカスがまだ足が動かけねぇ!マーモンの穴もある!すぐに誰か来い!』
『あらひどぉい!この短期間でビデオとれるぐらいは治したのよ!?』
『黙れ変態カスが!』
ルッスーリアを蹴飛ばしたのか、カメラの画面が揺れ地面に倒れこむのと同時に「いたぁい!」というルッスーリアの声が聞こえた。
『いいかぁっ!質問も反対も受け付けねぇっ!うちのクソボスもピンピンしてやがるが一応重傷者として手ぇ出せねぇんだからなあああ!!!わかったら早く来いクソガキ共!!!』

――――そうか。そういえばXANXUSは俺に負けて、今は安静にしてないといけないんだ。

九代目と俺の父さんがXANXUSの処分を決めるまであいつはボンゴレファミリーなんだ、とツナは思った。
こうして一方的に切れたDVDを山本は取り出した。
「で?どうすんだ?ツナ。」
「ど、どうするっていわれても〜・・・。」
「全く、あいつらは十代目の力なしでは何にもできないんすから!ねぇ、十代目!」

「いや、ヴァリアーはボンゴレの独立暗殺部隊だぞ。戦ったおめーらが一番わかってると思うがあいつらが人員を求めるってことは相当やべーってことだぞ。」

何の前置きもなく語った主は当たり前かのように座っている・・・
「リ、リボーン!?」
「よう、ツナ。」
ツナの家庭教師・リボーンであった。
「よう、じゃないよ!イタリア行ってたんじゃないの!?」
「あぁ、行ってヴァリアーの様子を見てきたぞ。」
さらりといったリボーンの言葉に皆静止する。
「予想以上にキツそうだったな。晴れの活性がねぇから倒れた奴の治療もできねぇ。サポートがいないのも痛かったな。おまけにXANXUSもいねぇし他の守護者もまだ戦いのダメージが残ってやがる。」
「そ、そんな・・!」
たしかに大変なことなのかもしれない。心の中の闇が悪い方向へと思考させてしまう。
少し青ざめたツナを見ていた獄寺は数秒黙り込んだ。が、決めたように前を向くと「十代目。」とツナを呼んだ。
「俺がいってきます!」
「えぇっ!?」
獄寺の発言にツナは驚く。
「ヴァリアーの野郎達なんかと戦うのは胸糞悪ぃっすけど・・・、十代目の心配する暇もなくかたをつけてきますから!」
任せて下さい!というような目で見てくる獄寺に対してツナは少し戸惑う。
ヴァリアーもてこずるような相手に一人で行かせたくない。
どうせ他の人がいくならいっそ自分がいったほうがいい、とツナは思う。
「いいんじゃねーか?獄寺にまかせても。」
「リボーン!?」
ニッと笑ったリボーンをツナは信じられない!というような目で見る。
「獄寺は元々イタリアに住んでいたからな、言葉もわかるだろ。“右腕”の見せ所なんじゃねーか?」
リボーンの「右腕」という言葉にさらにやる気が出たらしい獄寺は
「十代目の右腕として!俺!戦ってきます!」
と言い出した。
「なら早く準備しろ。すぐに出るぞ。」
「はいっ!」
リボーンのいうことを聞き、いうが早いか、獄寺はすぐに部屋を出た。

準備はさほど時間がかからなかった。「いってきます。」と行って部屋を出ようとする獄寺をツナはあわてて止めた。
「? 何すか?十代目。」
「これ持ってって。リボーンから、通信機。」
ポケットから小さな通信機をツナは獄寺に渡した。
「ありがとうございますっ十代目っ。」
笑顔で受け取った獄寺にツナは「それから・・・」とここで口ごもる。何かをいいたそうだが中々言えない。
「? 十代目・・・?」
「おい、そろそろ行け。」
リボーンの言葉でツナはびくりと肩をふるわせる。そして小さな声で言った。


「・・・・・死なないでっ・・。」


そのか細い声を獄寺はやさしい目をしてしっかりと受け止めた。
「―――はい、絶対生きて帰ってきます。」
そう言ったあと、ツナのほっぺにやわらかい感触と「ちゅ」と吸い付くような音がした。
キスされたことにツナは気づくとボッと赤くなる。
にこっと満足そうに笑った獄寺はもう一言いった。

「いってきます!」

獄寺の顔を直視できないツナだったがなぜか安心感だけが残った。



<数日後>

「それほんと!?」
朝早く、まだ眠かったツナの目が一発で覚めたのはリボーンのニュースのおかげであった。
「あぁ、見事ヴァリアーが勝ったそうだぞ。」
コーヒーを飲みながら優雅な朝をむかえているえリボーンがツナにそういった。
「じゃあ獄寺くんはっ・・・」
「無事だぞ。」
その言葉をきくとツナは急に力がぬけて床に座り込んだ。
「よかった・・・、よかったよ・・・。」
そのときピピピという着信音らしきものがなった。
「えっ、誰のケータイ?」
キョロキョロと音源を探ってみる。だがケータイらしきものは見当たらない。
「お前の通信機だぞ。」
「え、じゃあ獄寺くん!?」
今まで連絡なんかなかったのに。
だからこそツナは余計に獄寺の安否が心配だったのだ。
「ご、獄寺くん!?」
『あっ、十代目。こんば・・じゃなくて、おはようございますっ。』
そうか、あっちはイタリアなんだ。むこうは夜なのだろうか。
「大丈夫っ!?怪我とかしてない!?」
『はい、大丈夫です。というかヴァリアーの奴ら、俺に戦わせるとかよりも雑用が必要だったみたいな扱いでして・・・、忙しくて中々連絡が取れませんでした。すみません。』
雑用・・・、なんとなくヴァリアーならそんな扱いをしそうな気がする。
「そ、それで、何時帰ってこれるの?」
『そっすねー・・・、三日後ぐらいっすかね。』
三日・・・。まだ三日もあるのか。
短いようで長い。

さびしい。

「そ、そっか。早く帰ってきてね。」
獄寺に変な心配をさせないようにツナは精一杯平気なフリをした。
本当は早く会いたくてしょうがないのに。

『・・・十代目。』
「え?」

『帰ってきたら思いっきり抱きしめますんで覚悟しといてください。』

ツナは一時停止した。「え・・・?」とつい声を漏らすと獄寺の声がまた返ってきた。
『俺も十代目と同じぐらいさびしかったっすから!』
聞き違いじゃない、と思うと急に胸の奥が熱く感じた。
獄寺くんも同じように感じていたんだ。そう思うとさらに熱くなる。
『待っててください!すぐ帰るので!』
「・・・うん、獄寺くん・・・。」


君はいつも俺のこと一番に考えてくれたね。
ありがとう。
ありがとう。
まだ、信じてもらえる?

君は、俺の事をまだ信じてくれるのかな。

「ごめん、みんな。・・・獄寺くん・・・。」

―――――時は九年後。

「入江さん、雲雀さん、よろしくおねがいします。」

ボンゴレ十代目はこのあと死ぬこととなる。

「俺は白蘭のとこへいきます。」

マントをひるがえしたのは、九年後の、ツナだった――――・・・。

ボンゴレ十代目は死んだ。そのことは守護者全員、勿論彼の耳にも入る。
君は俺のために泣いてくれるだろうか。
でも泣かないで。俺は生きてるから。
そして信じて。俺は生きてるから。
俺のいない間、ボンゴレを護って。十年前の俺たちが来るまでは――――・・・。


頼むよ、右腕。



***


えらく長くなってしまった・・・!えっと、十年後のツナたちの、リング争奪戦後の話、です。
今のツナたちは争奪戦後すぐ十年後にいってしまいますが、十年後のツナたちは十年前はそのまま生活してたと思うのでその十年後のツナたちの話・・・ええい、ややこしい!

とにかくまぁフインキでも感じてくれたら嬉しいです。
獄寺のキャラソン「loop...」を聞いてたら急激に書きたくなった・・・!

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