私と姉様と猫達の七日間
□金曜日
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笛の旋律は、あまり人の通る事のない裏庭から聞こえていた。
縁側に一人腰掛け、夏の暑さを吹き飛ばすような美しい笛の音を奏でているのは、やはり美咲だった。
邪魔してしまうのはあまり良い事ではないとはわかってはいたが、俺は彼女の傍まで行ってみる事にした。
「にゃー」
「ん? ハジメちゃん、よくここがわかったね」
気付かれないように小さめに声をかけてみたが、それでも美咲には聞こえていたらしく、彼女は笛を奏でるのを止め、こちらを見てきた。
一日休んだおかげか、昨日より顔色は大方良くはなっていた。
「一人で来たの? 皆の所には行かなくて良かったの?」
「……み、」
「あ、もしかして皆に置いていかれたとかその辺?」
「…………………」
「………え、図星なの?」
……いや、図星ではないと言うか、そうであるというか…
考えるのに黙っていると勘違いされてしまったようで、美咲はごめんごめんと謝罪してきた。
別に怒っている訳でもないので黙っていると、今度は持ち上げられて膝の上に乗せられた。
見上げると、美咲は柔らかい笑顔で俺を見つめていた。
「まぁ訳は色々あっても、ハジメちゃんは私を心配して来てくれたのは何となくわかるから。ありがとう」
「にゃ
(礼など…)」
「あ、ハジメちゃん照れてる。可愛い〜♪」
美咲は俺の頭を撫でてきた。
その手がとても柔らかくて、自然と目を細めてしまった。
だが、そこで手が止まった。
再度見上げると美咲はまだ笑顔だったが…
先ほどとは違う、悲しみを帯びた笑顔だった。
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