私と姉様と猫達の七日間
□金曜日
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「……に?」
「……私、どうして今こうしてるんだろうね…」
「み?」
美咲は悲しい笑顔のまま、小さく呟いた。
それから顔を上げて庭の方に目を向けて静かに話し出した。
「……“あの時”、私が術に失敗さえしなければ、咲華は記憶を失くす事も無かったし、故郷を滅ぼす事もなかったかもしれない。咲華は気にしてないなんて言ってるけど、きっとどこかで、私の事恨んでるかもしれない…
それに今だって倒れるまであの子に仕事を押し付けて、私は一人休んでたなんて。
私…ずっと咲華に迷惑かけてばっかりな、悪い姉よね……どうしたら…、いい姉さんになってあげられたのかな…?」
………
こんなに弱気になっている美咲は、初めて見た。
そして当時に、いつも強気な彼女もずっと悩みを抱えている事を知った。
「……って、なに一人で猫に語ってるんだろ。馬鹿だよね…」
咲華は自分自身を笑うように苦笑して、また俺を撫でてきた。
俺を見つめる桜色の瞳は、また悲しみを深めていた。
……どうして、そんなに迷っているのか
そう彼女に言いたくなった。
咲華が…お前がずっと守り続けてきた咲華が、姉であるお前を恨んでいるはずがないだろう。咲華はいつだってお前を信じているはずだ。
二人が故郷を失った時の事は聞いたが、詳しい事はまだ話されていない。
その時何があったのかは俺は知らないが、それだけは確信していた。
だが伝えたくても、猫である俺には言葉でそれは伝えられない。
だから、俺は美咲に体を摺り寄せた。
それで、美咲が少しでも安心してくれるなら……
「どうしたの急に? 私を慰めてくれてるの?」
「みゃ〜」
「……ありがとう、ハジメちゃん。
あなたって、こういう優しい所が一さんに似てるよね」
でもやっぱり違うよね、と笑いながらも美咲は優しい笑顔に戻って俺を撫でた。
気付いてもらえなかったのは残念だったが、こうして彼女のいつも見せない不安を知れたのは少し嬉しかった。
〜五日目−壱 終了〜
⇒あとがき