私と姉様と猫達の七日間

□土曜日
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そして、今日はその本番


天気も良好で、祀りにはもってこいの日だった。


「――じゃあ、始めるわよ」

『……うん』


美咲がそう言って笛を構えると、咲華も頷いて、最初の体勢を取る。

蒸し暑い中微かに吹いていた風が止み、猫達も固唾を呑んで見守る。

そして――


水面に広がる波紋の静けさのごとく、笛の音は始まった。

途端に、その場だけが周りと隔離されたような、不思議な空気に包まれる。

そよ風のように流れる調と共に、咲華もそれに合わせて体を動かし、舞う。


一度も言葉を出さず、目を合わせる事もなく、
二人は音だけを頼りに、美しい舞を作りあげていた。


「…みゃ〜
(…やっぱり、美咲達は凄いよな)」

「にゃっ
(だよなー。あの綺麗さは誰にも負けねぇよな)」

「にゃぅっ
(そういう凄いって意味じゃねぇだろ、新八。まぁ、否定はしねぇけどよ)」

「みゅ〜っ
(三人共、ちょっと静かにしててよ。集中できないんだけど)」


彼女達の美しさに語る三人を沖田が嗜め、彼らはそれに魅入る。

その間にも続く舞は、二人が特別であることを物語っているようでもあった。


そして、いよいよ終わりに近づき始めた頃、変化は訪れた。

祭壇の榊と鏡が薄い光を放ちだし、どこからか鈴のような音が微かに聞こえる。

まるで、そこに姿は見えずも、何か偉大な者がいるかのように……

そして、一瞬その光が強くなったかと思うと、突然突風が吹き上げ、明るい空へと舞い上がっていった。

それに合わせて、二人の舞も終幕を迎えていた。


『……うまくいった、のかな?』

「…わからないわ。少し待ちましょう」


ようやく口を開いて空を見上げる咲華に続き、美咲も立ち上がって同じく空を見上げた。

しかしどれだけ見上げてみても、晴天の空には雲一つ見つからない…


『……』

「………
まぁ、気長に待ってみましょう。雨龍様もいきなり降らせる訳ではないだろうし」

『……そうね。
じゃあ皆、部屋に戻りましょうか』

「「「「「「にゃっ」」」」」」



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