私と姉様と猫達の七日間

□土曜日
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「もう充分だろう。咲華、美咲、我ら(鬼)の元へ戻れ」

「っ、やっぱり狙いはそれだったのね」

「当たり前だ。お前達は鬼の中でも尊い種族――神鬼だ。こんな弱い人間共の元になど置ける訳がない」


彼は今までに何度も彼女達や千鶴を狙って屯所に奇襲をかけてきた。

その度に土方達が対抗し、阻止してきたのだが、
今回はその彼らが二人の近くに居ない為(本当はいるのだが)、絶好の時だった。


二人と風間の間があと数歩となった所で――


「にゃっ!!」

「っ!」

「『……え?』」


その間を、何か光るものが掠めた。

風間は思わず足を止め、咲華と美咲は抜けた声を出してしまうと、
その二人の足元で、六匹の猫達が立ち塞がっていた。

その全員が、全身の毛を逆立て怒りを露わにし、風間を睨んでいた。


「にゃー
(人を勝手に弱い呼ばわりは、聞捨てならねーな)」

「にゃーにゃー!!
(咲華ちゃんにこれ以上近づかないでくれる?)」

「みゃ
(美咲は渡さん)」

「みゃう〜
(朝っぱらから口説くなんて、男らしくねぇぜ)」

「みゃーみゃっ!
(こいつ等に近づくな!)」

「にゃっ
(そうだそうだ。さっさと帰りやがれ)」


それぞれ思う所ありながらも、二人を守りたいという気持ちは全員が同じだった。

どんなに相手が強いと分かっていても立ち向かう彼らを、後ろで二人は驚いたように見ていた。

しかし、当の風間は嘲笑いを浮かべて見下ろしていた。


「ふん、幕府の犬ではなく貴様達猫が相手か。いつもとは違い面白そうだが、貴様らが俺の相手になるとは思えんが?」

「みゃ…
(そんな事……)」


「「「「「「にゃ〜〜!!
     (やってみきゃわかんない(ねー)だろ!!」」」」」」


同時に声をあげたかと思うと、六匹全員が彼に向けて飛び掛ってきた。

いつもは刀で戦う彼らだが、今の姿では刀など使えるはずも、持てるはずもない。

そこで彼らは持ち前の尖った爪や身体能力を生かした、猫本来の戦い方に従った。

引っ掻き、猫の手(パンチ)等色々と攻撃をするが、風間はそれを器用に避け、掻き傷一つも負わない。

猫達が疲れを感じ始めたときにも、彼は汗一つもかいていなかった。



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