私と姉様と猫達の七日間
□土曜日
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「これで終わりか? あまりにも呆気なかったな」
「「みっ…」」
「まぁ前戯にしては中々だった。そろそろ俺からも行くぞ」
風間は息を切らす猫達を見下ろし、自分の左越しに指している唯一の刀の柄に手を伸ばす。
するとそこで、
『やめてっっ!!』
「!?」
咲華の声が凛と響いた。
彼女特有の力を持った言葉に風間の動きが止まり、続いて美咲が前に出る。
「風間、早くここから立ち去りなさい! さもないと、私はあなたに向けて調を奏でないといけなくなるわ」
彼女はそう言って、いつの間にか部屋から取ってきた笛を構えて口元に寄せる。
調とは、彼女が持つあいてを苦しめる音の事だろう。
その脅しが通じたかどうかは定かではないが、風間は短くため息をついて、刀を持とうとしていた手を下ろした。
「神鬼の命に従って、今回はここまでにしてやろう。だが、次来るときこそ連れ戻させてもらおう」
「……やってみなさい。一さん達が、きっとあなたを追い返すわ」
「ふん、楽しみにしておこう」
美咲の言葉にそう言い残してから、彼は塀に飛び乗ったかと思うと、外の方へ消えていった。
それを確認して笛を降ろすと、美咲達はすぐに猫達の元へ走った。
『皆大丈夫!? 怪我とかしてない?』
「「「みゃ〜っ」」」
「あなた達のおかげで風間から注意を引く時間が出来たわ。本当に、ありがとう」
「「「「「「み、みゅ〜///」」」」」
笑顔を向けられた彼らは、同時に俯いて消えかけるような声で呟いた。
全員が、照れていたのだった。
その日の夜は、六匹全員に鯵の尾頭付きが一匹ずつ出された。
助けてくれたお礼だと言う二人に感謝しつつ、彼らは味わって食べたという。
そして、彼らが寝静まる頃――
変化は再び起きた。
〜六日目 終了〜
⇒あとがき