私と姉様と猫達の七日間

□土曜日
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あれから数日が経ち――



咲華も美咲もすぐに体調を取り戻し、元気になった。

こんなにも早くに回復出来たのは、彼女達持ち前の元気の良さなのだろうか。

それとも……?


そして今は、お昼過ぎ


「咲華ー、準備できた?」

『うんっ』

「あ、ちょっと待って。帯がずれてるわよ」


美咲に呼ばれて振り返った咲華は、姫巫女としての巫女装束を纏っていた。

同じく巫女装束の美咲は帯の事を指摘すると、綺麗にそれを正した。


「よし、これで大丈夫よ」

『えへへ、ありがとう。
それにしても久しぶりの感じだね。この服に袖を通すのも』

「そうね。結局あまり練習は出来なかったけど、まぁ大丈夫でしょ」


いくら月日が経っても小さくならない自分の装束を懐かしむように見る咲華に対し、
美咲は苦笑しつつ答えた。

そして、傍らの文机に置いていた竜笛を手に取る。


「さぁ、そろそろ行くわよ」

『うん。気合い入れて頑張る!』


咲華も続いて扇と鏡、榊を取って、彼女に続いて部屋を出た。



――――――
――――
――



彼女達が出てきたのは、土蔵の裏側にあるひっそりとした裏庭だった。

そこには既に即席の祭壇が用意されていて、
その傍には六匹の猫達が待っていた。


「「「にゃ〜」」」

『お待たせ、皆』

「誰にも見つかってないわね?」

「みゃっ」

「大丈夫みたいね」


見張りを頼んでいた猫達にお礼を言ってから、咲華は祭壇に鏡と榊を飾り置いた。

そして彼女はその目の前に立ち、美咲は少し下がった所に座った。


「準備万端。後は舞うだけよ」

『うぅ…緊張してきちゃった』

「大丈夫よ。いつも通り落ち着いてやればいいのよ」

『そう言われれも……だって、神様の目の前でやるんだよ? 緊張しない方がおかしいよ』

「神様はそんな恐ろしい方じゃないわ。私達が願いを込めて舞えば、ちゃんと応えて下さるわ」


落ち着かない様子で目を迷わす咲華に、美咲は落ち着くように声をかける。


これから二人が行うのは、彼女達の神社に伝わる“雨乞いの調”

最近の京の都は雨が全くと言えるほど降らず、日照の日が続いていた。

それをどうにか解決しようと、二人は雨を司る神様――雨龍に舞を捧げ、雨を降らせてもらおうとしていたのだ。

数日前の練習も、その為の舞の練習だった。



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