短編小説
□最愛の帰還
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「じゃあ、あんたも地獄行きだな」
アジア支部の一室から聞こえたその声は、大好きなとても大切な人の声で……
ルベリエの制止の声も今は聞こえない
「ユウ……っ!」
「恭弥……″おかえり″」
「!……っ、ただ、いま……っ。ユウこそ、おかえりなさい……」
「あぁ……ただいま」
ユウに勢いよく飛び付いたけれど彼はきちんと受け止めてくれた
「六幻……」
「預かっていたらしい。……離れてろ」
「う、ん……」
ユウはズゥの持っている錆び付いた六幻をにぎるとビシ、と音が響いて、キューブが現れた
僕の目の前にも、姿は変われどそれは以前に共に戦った僕自身のイノセンス
「!……烈火……」
「共鳴、したのか……?」
「キュ、キューブに変化した!?この現象は六幻と烈火、まさか……っ
結晶型に……!?」
「恭弥…また俺と、歩んでくれるか?」
「もちろん。その為に、僕は″在る″」
「まって、神田ッ、恭弥君!」
ばちん!
「なっ……っ」
目の前でキューブになった六幻が潰されてユウは目を見開いた。いや、僕も例外じゃないけど……これは……
「いいの……?
神田は……私たちよりずっとずっと長い間、教団に縛られてきたんでしょう!?
恭弥君もせっかく元の世界に戻ったのに……!
あなた達の過去や自由、大好きな人をも奪った教団から、この世界からもう二度と出られなく……なって…なっちゃって…………せっかく……自由になれたのに……っ」
「リナ……ありがとう」
「あーあ、液体になっちまったじゃねーかよ。怒んなよ」
「へ?」
「!?」
「ちょっ……?」
リナリーの手の中にある液体になった六幻をユウは躊躇いもなく飲んだ
……ちょっと嫉妬するんだけど……
僕の前で浮いていたキューブも液体になると、それを喉へと流し込む
「恭弥君……!?」
「心配してくれてありがとう、リナ…
でもね…僕は元の世界に戻ることなんて出来なかった。許してくれなかったんだ
元の世界に戻れなくて、この世界には戻ってきた
だったら、僕はユウと歩む道を選ぶ
それが、たとえ茨の道であっても
僕はエクソシストの《雲雀恭弥》として、生きる」
「俺も恭弥と似たようなもんだ
俺はもう自由だ。今度こそ本当に、神田ユウとしてエクソシストになるって決めたんだよ
そして、雲雀恭弥と共に生きる」
大切な人の、ユウの力になりたい。僕の気持ちに答えて────……烈火!!
「六幻、発動」
「燃え上がれ、烈火」
左腕に刻まれた十字の傷から形成された烈火は第二制御を解除した漆黒の刀身になって僕の手元に戻ってきた
「お帰り、烈火」
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