短編小説
□対峙と狂乱
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「恭弥の相手は俺だぜェ」
「あっそ」
氷柱剣戟で作られた槍と僕の烈火がぶつかり金属音が鳴り響く
「……ユウ、またあとでね」
「あぁ。絶対に、戻ってこい」
「当然」
皮肉気に笑うユウに告げてから地面を蹴り上げて烈火でカルテを振り払う
「ふぅん、強くなってんじゃねぇのォ。面白くなりそォ」
「楽しむつもりは無いよ。業火──混沌!」
「!」
烈火を地面に突き立てて現れるのは竜を象った炎。カルテには直撃したはず……
「ぷっは!炎のシャワーってかァ?服が焦げちまったじゃねぇかよォ!」
服が焦げただけ、か……
第三制御を解除しても、力負けするか……
「だったら……第四制御、解除
僕の痛覚と命を引き換えに高まれ、業火──残響!!」
刀身をなぞって炎が一層燃え上がり、烈火を振るえば辺り一面に放射されてカルテを狙う
「煉獄!!」
カルテのいた場所に歩み寄れば左腕を押さえて叫んでいた
そこを見れば焼けただれている。ノアだから同情なんてしないけど
「ぅあぁぁ!俺の腕ェ!!
なんちゃってェ〜♪」
「!!」
先程まで焼けただれていたはずの腕は煉獄を放つ以前、つまり回復していて……
「言うの忘れてたけどさァ、俺の本当の能力って《剥奪》なんだよねェ」
「はくだ、つ……?」
「そ。だからさ、こんなことも出来ちゃうわけ」
「ユウが生きている限りぼくは……」
「───っ!?」
脳裏に過るあの記憶。《僕》が
何で、今…これが……?
「《狂えよ》、恭弥」
「……アル、マ……」
懐かしくも残酷な名前と共に僕の意識は途切れた
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