短編小説

□requiem
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古代都市、マテール
今はもう無人化したこの町に亡霊が棲んでいる──
調査の発端は地元の農民が語る奇怪伝説だった

亡霊は、かつてのマテールの住人
町を捨て移住していった仲間達を怨み、その顔は恐ろしく醜やか
孤独を癒すため町に近づいた子供を引きずり込むと云う


「あの、ちょっと、ひとつわかんないことがあるんですけど……」


「それより今は汽車だ!」


「無駄口叩いてないで急ぎなよ」


「汽車がまいりました」


「でええっ!?これに乗るんですか!」


屋根伝いに目的地へと向かっていた四人の前に汽車が現れてそちらへと飛び乗った
綺麗に着地したのは神田でその腕の中にはすっぽりと雲雀が収まっている


「飛び乗り乗車……」


「いつものことでございます」


「あー……神田……?」


「……危ないだろうが」


「むぅ……いつまでも過保護なんだから」


「ふん」


雲雀を下ろしてから同行していた探索部隊の男性が近くにある天井を開いて汽車内へと入っていく


「困ります、お客様!
こちらは上級車両でございまして、一般のお客様は二等車両の方に……てゆうか、そんな所から……」


「黒の教団です。一室、用意してください」


「!黒の……!?」


神田の団服に目をやったボーイは慌ててぺこりと頭を下げた


「か、かしこまりました!」


パタパタと走り去っていくボーイにアレンは目を丸くした


「何です、今の?」


「あなた方の胸にあるローズクロスはヴァチカンの名において、あらゆる場所の入場が認められているのでございます」


「へえ」


「ところで、私は今回、マテールまで、お供する探索部隊のトマ。ヨロシクお願いいたします」


トマは挨拶をしてから用意された部屋の外に立ち、雲雀達は中に入った


「で、さっきの質問なんですけど
何で、この奇怪伝説とイノセンスが関係あるんですか?」


「(めんどくせ……)チッ」


「イノセンスってのはだな……」


「(今「チッ」って舌打ちした)」


「大洪水(ノア)から現代までの間に様々な状態に変化している場合(ケース)が多いんだよ
初めは地下海底に沈んでたんだろうけど、その結晶(いし)の不思議な力のせいで導かれるのか人間に発見されて色んな姿形になり、存在していることがある

──そして、それは必ず奇怪現象を起こす」


「じゃあ、この《マテールの亡霊》はイノセンスが原因かもしれないってこと?」


「ああ
《奇怪のある場所にイノセンスがある》
だから教団は、そういう場所を虱潰しに調べて、可能性が高いと判断したら俺達を回すんだ」


「ところで……二人はどういう関係なんですか?」


「「恋人」」


「へぇ……ってえぇぇぇ!?」


なに食わぬ顔で告げた言葉にアレンは驚愕の声を室内に響かせた


「煩い。別に驚くことでもないでしょ」


「ただならぬ関係だとは思ってましたけど……まさか恋人だとは……」


「……ん?ねぇ、神田。これって……」


資料に目を通していた雲雀はある部分を指差しながら神田に声をかけた


「これは……」


「そうでございます。トマも、今回の調査の一員でしたのでこの目で見ております


マテールの亡霊の正体は……」



トマによって告げられた真実に雲雀達は静かに耳を傾けていた
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