短編小説

□requiem
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「よっ、と……。それが、イノセンスを持つ人形?
(あれ?人間の臭い……?)」


「どうした、恭弥」


神田の元に降りて二人の人物を見るなり怪訝そうな表情を見せた雲雀に神田は訊ねるが雲雀は首を横に振った


「(気のせいか……)何にもないよ」


「そうか。おい、お前
俺達は助けないぜ。感情で動いたお前が悪いんだからな。一人で何とかしな」


「いいよ、置いてって。イノセンスがキミ達の元にあるなら安心です
僕はこのアクマを破壊してから行きます」


「……行く?」


「ああ」


雲雀と神田はその場にアレンを残して人形を連れ、その場から退いた















「地下通路?」


「この町には強い日差しから逃れるための地下住居があるの
迷路みたいに入り組んでて、知らずに入ると迷うけれど、出口のひとつに谷を抜けて海岸線に出られるのがある」


「アクマは空を飛ぶから隠れるなら地下ってことか……」


雲雀の確認に少女はこくりと頷いた



《ジリリリリン!》


「トマか。そっちはどうなった?」


無線ゴーレム越しにトマの状況報告がされていく


《別の廃屋から伺っておりましたが、先ほど激しい衝撃があって、ウォーカー殿の安否は不明です


あ、今、アクマだけ屋内から出ていきました。ゴーレムを襲っています》



「わかった。今、俺のゴーレムを案内役に向かわせるから、ティムだけ連れてこっちへ来い」


《はい》


「恭弥、あいつの居場所……分かるか」


「今、探してるけど……何だかおかしい。似た気配が二つあるんだ」


「二つ?」


「うん
でも見た目の割りにしぶとそうだから、心配はいらないと思うけど」


「違いねェな
恭弥はレベル2と何回破壊したことがある」


「えっと……この前のラビとの任務で2体、それから単独の任務で1体かな
でも、あのアクマは進化したてだったから案外簡単だったよ」


「そうか。なら、心配はいらねぇな」


「当たり前。で、地下に入るんでしょ?道は知ってるの?」


「知って…いる」


「グゾル…」


「私は…ここに五百年いる。知らぬ道は無い」


グゾルは帽子をはずすとその容貌が露になった


「!!」


「くく…醜いだろう…」


「お前が人形か?話せるとは驚きだな」


「そうだ…お前達は私の心臓を奪いに来たのだろう」


「できれば今すぐ頂きたい」


「!!」


「デカイ人形のまま運ぶのは手間がかかる」


「ち、地下の道はグゾルしか知らない!グゾルがいないと迷うだけだよ!」


「君は、何?」


「私は…グゾルの…」


「人間に捨てられていた子供…だ!!
ゲホ…私が…拾ったから側に…置いでいだ…!」



「グ、グゾル……っ」


「ゲホッゲホッ」


「(捨てられていた、ね……)」


「…………」


「神田殿、雲雀殿」


「!」


「悪いけど、僕たちも引き下がれないんだ
あのアクマに君の心臓を取られるわけにはいかないからね」


「今はいいが、最後には必ず心臓をもらう
巻き込んですまない」


「「…………」」


「ティムキャンピーです」


合流したトマの手から粉々になっていたティムが戻っていく


「お前が見たアクマの情報を見せてくれ、ティム」


神田の言葉に呼応してティムは映像を見せ始める
それを雲雀と神田はじっとみた


「……鏡、みたいだね」


「はい?」


「逆さまなんだよ、このアクマ……」


「見てみろ。奴がモヤシに化けた時の姿……服とか武器とか……左右、逆になってる」


「モヤシ?」


「あの新人のこと。あ、この切られた奴も逆だね」


「しかも偽者は中身はカラで360度外見だけのもの。ただ単に《化ける》能力じゃない…」


「まるで対象物を何かで写し取ってるみたいだね」


「しかも写し取ったそれを装備すると、その能力を自分のものにできるようだ。モヤシの左腕を変形させて攻撃をしてるところを見るとな……」


「……やっかいなものを取られて……ったく、面倒くさい…」


推測を述べていく二人が揃って舌打ちをした後ろでトマはしゅん、としょげた


「ウォーカー殿を探すべきでございました
もし、ウォーカー殿が生きてても現れた時、本物かどうかわからないです」


「それは大丈夫だろ。左右、逆になってるんだから、すぐわかる
もし、そんな姿でノコノコ現れたらよほどの馬鹿だな」


「うん。探知の方も今は使い物にならなくても、左右逆になってるなら問題ないよ」


「探知、とは?」


「僕は一度会った人の場所が8割の確立で分かるんだよ
まぁ、あまり頼りにならないけど

……ってあれ?」


「ふたりがいない!!
に゛っ逃げやがった!!
くそ、あいつらどこに……っ」


「!神田殿、後ろ……」




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