短編小説

□requiem
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「ハッ、ハッ……痛っ」


「ウォーカー殿…私は置いていってください…
あなたもケガを負っているのでしょう…」


「なんてこと無いですよ!(それよりも雲雀が……)」


「……やっぱり……これしかない」


「?どうしたんですか?」


「……グゾルとあの女の子だ。人形は……グゾルなんかじゃ、ない……っ」


「……歌……?」


「は?歌…?」



「歌が、聴こえる……」



アレンは歩いて行くと少し広い場所へと出る
そこにはグゾルとその人形であるララが抱き合っていた


「!!」


「あ、ごめんなさい。立ち聞きするつもりはなかったんですけど……」


「やはり、君が人形か……。
どうもそっちの彼は人間臭かった」


ガッ、とララが近くに倒れていた石柱を掴んで持ち上げ、アレンに向かって容赦なく投げつけた


「どわたっ!?」


「烈火、発動!」


「ままま、待って待って!落ちついて話しま……わっ!!」


「話しても無駄だろうね………」


アレンは石柱にトマを寝かせた隣で雲雀は膝を付いて神田を下ろす


「聞いてくれそうにないな」


アレンは左手の手袋を外してイノセンスを発動させると飛んできた石柱を掴んで



「それっ!!」



回転を加えて放り投げた。ララの背後にあった石柱は崩れていく


「え!?石柱を……っ」


「もう投げるものは無いですよ
お願いです。何か事情があるなら教えてください。可愛いコ相手に戦えませんよ」


「…………」


「グゾルはもうじき、死んでしまうの。それまで私を彼から離さないで
この心臓はあなた達にあげていいから……!」


「(嗚呼……そうか。すぐにイノセンスを取り出せないのは)
君が……僕に似ているからか…」


ララの叫びのあとに雲雀が皮肉気に笑ったのを見てアレンは目を丸くする


「……何」


「いや……そんな顔もするんだな…って」


「君は僕を何だと思ってるわけ」


「………無感情な人…?」

「……違いはないね。元は何も感情なんてなかったんだから
神田と会ってから色々教えてもらった。だから、死なせたくない」


「あの、雲雀って今、何歳ですか?」


「いきなり何なの。年齢なら……16歳、のはず……はっきりと覚えてないけど
神田にはそれくらいだと言われた」


「神田に?」


「僕は死にかけだったところを神田が助けてくれた。僕には家族なんていなかったから、僕にとって唯一の、かけがえのない家族なんだ」


「すみません……嫌なこと、思い出させて……」


「……別に。君も独り身だったってクロスから聞いてる
《馬鹿弟子と同じくらいの歳だな。お前と気が合うかもな》って言ってた」


けど、と雲雀は続ける


「絶対に合わないね
全部を救えるなんて甘いこと考えてたら一生ね」


「それでも、僕は……」


唇を噛み締めたアレンを横目に見ながら雲雀は小さくため息をつく
しばらくして広間のような場所に着くと雲雀はあ、と声をあげた


「僕のコート……血塗れだ」


「あ、僕の方が少し血は付いちゃってるけど、まだ綺麗なので使ってください」


「……ありがと」


少し離れた場所でグゾルの上に乗りながらララは口を開いて過去を話していく




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