くりすます・しいん

▼書込み 

11/30(Wed) 05:35
おいしいケーキ
ももくり



バター

小麦粉

砂糖

生クリーム

イチゴ

あと、あと…。

片手に持った本と、テーブルの上に並べたものたちを見比べる。
赤と白の並ぶ写真を見比べると、この季節には欠かせない彩で思わず顔が緩んだ。

「何を始めるんや」
「ケーキ作るの」

テーブルの上から降ってきた声に、本から顔を上げずに返事をした。
ケロちゃんは、ふわふわ浮かんでは並べているものを興味深げに見つめてる。

「そうか、明日のおやつはケーキ…。今日もやないか!!」
「うん、そうだね」

‐よっし、材料オッケー

ボールを引き寄せて、卵を割りいれる。
盛り上がった黄身。
その周りを取り囲むような透明の白身からは、銀色のボールが透けて見えた。

もう覚えてしまった手順をたどるように卵を溶くと、その中にゆっくりと砂糖を入れ込む。

「さくら、さくら、もうケーキはやめへん?」
「どうして」

空中で腕と足を組んで小さな目を寄せるようにしてボールを見つめてる。
軽快というには、ほんの少し遅い速度で混ぜていた卵たちを置いてケロちゃんを見つめた。

「昨日も、その前も、その前もケーキやないか」
「だって、もうすぐクリスマスなんだよ」
「そうや、クリスマスや。それまでにいったい何日あるとおもっとるんや」
「えっと、一ヶ月?」
「そうや、一ヶ月もあるのにほぼ毎日ケーキを作るんか?」
「ほえ?だめかな」
「だめも、なにも」
「だって、当日すっごくおいしいケーキを食べたいじゃない」

‐小狼くんと一緒に…。

そんな言葉を飲み込んでケロちゃんのほうを見ようとしたけれど、すぐ目の前に飛んできた。
休んでいた手を、ゆっくりと動かす。
カシャカシャいう音とケロちゃんの声が重なる。

「さくら、考えてみいや。今から毎日ケーキを食べてるやろ?すると、当日飽きておいしくなくなる」
「そうかな?」
「そうや、絶対や。そやからな、今日は別のものに」
「でも、もうスポンジ作っちゃった」

卵と砂糖を混ぜた生地は、濃い黄色い色から空気を含んだ薄い色に変わって、ふわふわのスポンジを思わせるように膨らんでいた。

「まあ、今日はしゃあない」
「でも、でも、材料もイチゴしかないよ」
「そ、そうかいな。な、なら明日から…。」
「う〜んでも」
「あ、明日はクッキーなんてどうや?食感も変わるし、ええんやないか」
「でもな」

手元からは目を離さずに、生地の出来を確認する。
‐こんなもんかな
ケロちゃんはその後もなんだかぶつぶつといっているけど、あんまり気にせずに白いパラフィン紙を置いたサークルに生地を流し込む。
‐よっし
オーブンの中に入れて、テーブルの上を片付けると、小さなボールに黄色い液体が残ってた。

「ほえーーー。バター入れるの忘れちゃったよ」

ボールを両手で抱えて溶かしバターを覗き込む。
ゆらゆらとゆれる液体と同じ色をしたケロちゃんに思わず。

「もう、ケロちゃんのせいだからね」
「なんでや」
「ケーキつっくるのやめようとか言うから」
「言っただけやないか」
「でもでも、今日のケーキはケロちゃんが食べてよね」

出来上がったケーキはきっとふくらみが足りなくって、味がないかも。
そんな想像をするだけで、少し困ったような笑顔の小狼君が浮かんでくる。

「もう、やっぱり明日もケーキの練習するもん」

−おいしいケーキのできる日までがんばるんだから。
キッチンでの格闘はまだまだ続く

fin

ここまで読んでいただきありがとうございました。
12月になる前に小話ができてよかったです^^
この調子でチョコチョコと書いていけたらと思います。

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