囚われの姫君
□交差する視線
1ページ/2ページ
'
「護衛、ですか?」
「あぁ。四大貴族よりも上を行く大貴族と書類に書いてある」
「…なんか…肩凝りそうですねぇ…」
ある晴れた日。
十番隊に重大な任務が与えられた。
その任務とは。
「朽木隊長より上の貴族かぁ…」
四大貴族よりも上を行く、王の一歩手前に君臨する大貴族の護衛。
しかも。
「鬼道を尸魂界に伝えた一族だ」
死神の戦闘術は大別して、“斬拳走鬼”と四つに分けることが出来る。
十番隊が護衛を任された貴族は、そのうちの一つである“鬼道”を創り上げた一族なのだ。
「へぇ!じゃあ、あたしらが使う鬼道を創ったってことですね!」
「あぁ。」
そんな大貴族の護衛を任された隊の隊長、日番谷冬獅郎と副隊長である松本乱菊。
二人は詳しい説明を聞くべく、貴族の邸へと向かう。
「無駄にでかいですね」
「…貴族だからな」
護衛先の大貴族の邸の前。
巨大な門を見上げる二人。
「まずは当主と警備の配置を決めるぞ」
「はぁい」
冬獅郎が門に手を付けば。
ゴゴゴゴッ
と、すごい音を立てながらゆっくりと門が開いた。
「十番隊の方々でございますね?」
その先にいた凡そ五十人はいるだろう使用人が二人を出迎えて。
「ご当主様がお待ちでございます。どうぞこちらに」
執事である老人が先導し、冬獅郎も乱菊も執事について行こうとすれば…。
「申し訳ございませんが、隊長様お一人でお願い致します」
「「……」」
副隊長の乱菊はダメ!ってことで。
「…あたしも一応隊長格なんだけどなぁ…」
乱菊はため息を零す。
「…終わったら呼ぶから、その辺にいろ」
「はいはい…」
冬獅郎は乱菊を残し、執事と行ってしまった。
「……はぁーあ…。隊長と副隊長の扱い方が全然違うのね…」
手持ち無沙汰な乱菊はフラフラと邸内を歩き出す。
女性死神協会の本部として朽木家に出入りしているが、やはり四大貴族を凌駕する大貴族あって、庭園や建物は朽木家よりも大きい。
「鯉もウザいくらいいるわねー」
大きな池には、高そうな鯉がたくさん泳いでいて。
橋も長いしたくさんあるしで。
「…庭で迷子になりそうだわ…」
乱菊は再度ため息を零した…。
「隊長まだかなぁ…」
邸の少し奥。
10mほど高い位置に窓がある建物の前。
池の前にしゃがみ、ブチブチと草を抜いて池に放る。
「お腹空いてきたし…」
文句を言いながら、パタンと倒れた。
「ん?」
乱菊が見上げた先には、差ほど大きくもない窓があって。
乱菊は体を起こし、窓を見上げる。
「………」
乱菊の目に映ったのは。
「ご息女かしら、あの子。」
無表情に乱菊を見つめている、一人の少女の姿。
「おーい!ちょっとー!」
「………」
「んま…。無視したわあの子…」
この出逢いで、二人の運命は大きく動き出す。
儚く、哀しく…。
刻々と…動き出す──…。
NEXT