世界の在り方
□第1話 光
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姫様の耳に入っているかは分からないけど、このウリズン帝国とガルバンゾ国は今緊張状態にある。
どちらも積極的にこの世界の鉱物資源の星晶<ホスチア>を採掘する国だ。
どうあっても衝突を避けられなかった両国の緊張状態は限界近くまで達している。
けれど。
「ふふ、可愛い子」
「にゃー」
フェリーチェと戯れる姫様を見ているとそんなこと忘れてしまいそうになる。
すると温室に駆け込んでくる一人のメイド。
彼女は私を見ると「あ!アーシィ様!」と声を上げた。
「何?私に何か用?」
「というよりは伝言、です」
本部へ戻ってこい、とのことです。
そう言うとメイドは私と姫様に頭を下げ、温室を出ていった。
「あ…。アーシィ…」
「…すみません、姫様。もしかしたらまたしばらくここへ来れないかもしれません」
そう言うと、姫様は悲しそうに俯いた。
そんな彼女に私は小さく笑って髪につけていた蝶のバレッタを手渡した。
「え、これ…」
「まだ予備はありますのでご心配なく。どうぞそれを私だと思って大事になさってください」
それでは、と言い私は温室から駆け出ていった。
バレッタで留められていた髪が揺れるけれど、姫様に悲しそうな顔をされるよりはよっぽどましだ。
なんて思いつつ。
光
(アーシィ、アーシィ。どうか無事に帰ってきてください)
("ディセンダー"が生まれてしまうほどの世界の危機に、どうか貴女が巻き込まれませんように)
(私には願うことしかできないのです)
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