翡翠

□泣くということ
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あんたのそういう処が―好きだったんだわ

「何してんだ?」

すぐ近くから隊長の声が聞こえて、あたしは顔を上げた。
どうやら、あたしは周りに気を配れないほど泣き崩れていたらしい。
うずくまって顔を泣き腫らしているあたしを見て、隊長は眉間にしわを寄せる。

「隊長が修行してるっぽかったので気になって……。」

わざと明るく返したあたしに、隊長は顔をしかめた。

「そんなこと聞いてねぇ。何で泣いてんだよ。」

言葉を返せないあたしに隊長は溜息をついた。

「市丸のことか?」

バッと顔を上げたあたしから目を逸らした隊長は、衣服についていた氷を払う。キラキラと光る氷の粒がとても綺麗だ。

「情けないですよね……こんなに泣いて。」

「いいんじゃねぇの?」

言葉を聞き間違えたのかと思い、隊長の背中を見つめる。前よりも大きくなったような気がするのは気のせいだろうか。

「俺達は泣くことができる。それは必要な時があるってことだろ。」

ちょっと理屈っぽい、隊長らしい言葉にあたしは笑う。

「……だから、泣いたっていいんだ。」

気付くと隊長は真っ直ぐにあたしを見据えていた。
何て優しい瞳で、声であたしに接してくれるのだろう。
何て優しい言葉をかけてくれるのだろう。
止まりかけていたあたしの涙がまた溢れ出す。再び顔を俯けたあたしを見ないように、隊長はまた背を向けた。
そっと傍に居てくれていることが嬉しくて、ますます涙が止まらなくなる。

ギンの最後の言葉を思い出す。
形見も何も残してくれなかったあんただけど、あの言葉だけは忘れない。
声にならない声で一生懸命、伝えてくれた言葉。

「日番谷はんと一緒なら、乱菊は幸せになれるはずやから。」

信じるんや……そう言ったあんたを。
あんたが最後の最期でくれた最高の贈り物。

「たいちょ、髪にも氷ついてますよ。」

振り向いた隊長にあたしは近付く。
そして、そっと髪に触れた。

「もう、いいのか?」

「はい、隊長のおかげですよ!」

柔らかな銀髪に乗っかる氷を、払いながら応える。

ねぇ、ギン?あんたがあたしの幸せを願ってくれてるなら……。幸せになるよう努力すべきよね。

まだあたしより小さい隊長に抱き着きながら、前に進むことを決めた。

end...

冬獅郎と乱菊はホントにいつも一緒ですね。まさに夫婦!雛森よりもきっと繋がってますね。
気軽に感想下さい(^_^)v

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