空
□伝えられない想い
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総隊長より下された命令。それは多分きっと生きては帰ることのできない任務。
「日番谷くん!見たよ、今月の瀞霊廷通信!」
急に私室の扉を開け放ち入って来た姿と発言に溜息を零す。
「……雛森。頼むから普通に入って来てくれ。」
「袋とじの写真、かっこよかったよ!さすが、日番谷くん!」
「……聞けよ。」
文机の横に敷きっぱなしになっている布団へと飛び込む雛森。当たり前のようなその行動に叱り付ける気力も削がれる。
「檜佐木さんもきっと大助かりだね。日番谷くんが稼いでくれるから!」
「なんかその言い方いやだな……。つか、許可した覚えはねぇっ!」
「あはは!」
思いっ切り笑って、持参した瀞霊廷通信をめくり始めた雛森。俺は大きく溜息をついて書類に目を戻した。
静かな寝息に、我にかえる。
「仮にも隊長格の私室で寝るか……?いや、仮じゃねぇけど。」
自分の発言に軽くつっこみつつ雛森に布団をかける。
熟睡しているらしく握っていた瀞霊廷通信をとっても起きない。
俺はそれを文机に置き雛森へと手を伸ばす。髪紐やらをとると黒く柔らかな髪の毛がはらりと流れた。
しばらく寝顔を眺めふと昔を思い出す。
あの頃はもっと近くでこいつの寝顔を見てた。幸せそうに眠るこいつを見るのが好きだった。もう戻れない。
俺の心に明かりを燈してくれた人。
一人じゃないと教えてくれた人。
護るという想いを教えてくれた人。
「済まないな、雛森。」
伝えたいことは沢山あるけれど……。それしか言えなかった。
結局いつもと何ら変わらない台詞。最期ぐらい"ありがとう"と素直に言える自分になりたかった。
隊首羽織を身につけ氷輪丸を担ぐ。翻る羽織の音が氷輪丸の奏でる涼やかな音が、もう戻れないと囁いているようで。
俺は振り返った。そこには変わらず寝息をたてる少女の姿。
大事な家族。別れを告げることは今の俺にはできないから……。だから、せめて。
「おやすみ、雛森。」
変わらず幸せそうに眠るお前に幸せな夢を……。
明かりを消した部屋を、俺は音もたてずに出た。
end...
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おまけ
「冬獅郎ー!居るかぁ?」
大きな声に目を開ける。そこには目を点にした一護くんの姿。
「どうしたの?」
「いや……ここ、冬獅郎の部屋……。」
「いけない!あのまま寝ちゃったんだ!」
目に留まったのは文机の上の瀞霊廷通信と髪紐など。
「髪……くせがついちゃわないようにとってくれたんだ。」
「冬獅郎、もしかして仕事?」
「そうみたい。帰って来たら謝らなくちゃ。」
「冬獅郎にはお礼を言った方がいいんじゃねぇか?あいつに礼の言い方くらい覚えてもらわねぇと。」
「そだね。いつも謝ってばっかだもんね。でも、そこが……」
不思議そうに私を見る一護くんを見返す。
「でも、そこが日番谷くんのいいところ!」
しばらくきょとんとしていた一護くんは嬉しそうに笑った。
一護むりやり頑張って出しました。シリアスでごめんなさい。禁断症状が出てしまって。シリアス好きって何か……泣。