□出逢い
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寒い冬が終わり春が芽吹き始めた季節、海燕は雨乾堂の縁側に腰を下ろしていた。
最近調子が良い浮竹は文机で読書をしている。
平和な光景に海燕は息をついた。

「一番隊の日番谷です。書類を届けに来ました。」

「あぁ、入って来てくれ。」

「失礼します。」

海燕はその名前に首を傾げる。どこかで聞いたことがあるような気がしたからだ。
死角になっているため、海燕の位置から姿は見えない。

「わざわざすまないな。」

「いえ。」

「はは、無理して敬語使わなくてもいいんだぞ。」

「そんなんじゃねぇっス。」

ぎこちない敬語に浮竹は笑った。

「甘納豆、食べて行くかい?」

「いいっス、まだ勤務中なんで。」

浮竹のいつになく優しい対応を不思議に思った海燕はそちらを覗く。
そこには、銀髪で綺麗な瞳をした子供がいた。
海燕は興味を引かれて二人に近付く。海燕の方を見た冬獅郎が怪訝な視線を向ける。
そんな冬獅郎を無視して海燕は彼の頭に掌を乗せた。

「思ったより小っせぇなぁ。」

冬獅郎の地雷を踏んだことに気付かない海燕は尚も続ける。

「いっぱい食わねぇと、でっかくなれねぇぞ。」

「……せぇよ。」

笑いながらポンポンと頭を押さえる海燕に冬獅郎が叫ぶ。

「うるせぇっつてんだろ!!てめぇ、ふざけやがって!!」

海燕はそんな冬獅郎に目を丸くしたがすぐに言い返す。

「副隊長に向かってその口のききかたは無いだろうが!」

「副隊長?じゃあお前が志波か。」

副隊長の怒声にビビりもしない冬獅郎に海燕は驚く。

「そうだよ。いい奴だろう?」

浮竹の言葉に冬獅郎は言う。

「お前が言ってたのと違う気がするんだが。」

正直な感想を聞いた浮竹はそんなことないさ……と笑う。
そんな浮竹を呆れたように一瞥した冬獅郎は踵を返す。

「もういい。邪魔したな。」

そう言って部屋を出た冬獅郎を海燕は見つめる。

「気になるなら、ゆっくり話してくるといい。彼は優しい子だよ。」
浮竹を見た海燕はニカッと笑って冬獅郎を追いかけて行った。

「何の用だ?」

「だから口のききかたに気をつけろって言っただろ。」

「うるせぇ。」

「……さっきは悪かったな。」

冬獅郎は驚いたように海燕を見る。

「俺は志波海燕。十三番隊の副隊長だ。お前は?」

「……日番谷冬獅郎、一番隊第三席……です。」

きちんと答えてくれた冬獅郎に海燕は笑いかける。

「冬獅郎か……気に入った!!お前が一番、楽な喋り方でいいぜ。」

突然変更された内容にポカンとした冬獅郎に言う。

「また来いよな。俺、暇な時は雨乾堂に居るから。」

「……なんでだ?」

意図を測りかねたように尋ねる冬獅郎に海燕は困った顔をする。

「気に入ったって言ったろ?"お前に会いたいから"ってだけじゃいけねぇのかよ?」

「……!?」

心底驚いた冬獅郎だったが照れたように顔を伏せて言った。

「あぁ。また寄らせてもらう。またな、志波。」

歩いて行った冬獅郎を見送った海燕は来た道を帰る。

「たしかに優しい奴っすね!!」

帰って来た海燕の嬉しそうな様子に浮竹は微笑んだ。

海燕は結局、冬獅郎が瀞霊廷を騒がせている神童とは気付かなかったようだ。

冬獅郎は一番隊舎へと帰りながらそっと呟いた。

「お前の言う通り優しい奴だったよ……。」

冬獅郎がその後すぐに隊長になったのはまた別のお話。

end...

浅い話…。すみません。浮竹さんと海燕と冬獅郎の絡みが好きです。
気軽に感想下さい(^_^)v

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