頂を目指す二ノ姫

□それが始まり
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歯車は彼女の視た通りに揃った
黒き神は近すぎるが故に気に留めず
大空と天候は性急に移ろう日々の前に気付かず
誰も知らない所で、着実に舞台は整っていた
それが怖くて苦しくてたまらない...
休日の朝早くに、一本の電話が鳴った。

『ジュニアテニストーナメント?』
「“ああ。その大会にアタシの教え子の息子が出るんで孫と見に行くんだけど、桜も一緒にどうだい?”」

その誘いに桜と呼ばれた少女は面白そうだと言わんばかりに満面の笑みを浮かべた。
おもちゃを与えられた子どものようであるが、下唇を触る仕種はどこか大人びていた。

『へえ。行くわ』
「“そう言うと思ったよ。じゃあ迎えに行くから準備しとくんだよ”」
『ええ!』

受話器を置いて、桜はクローゼットから服を引っ張り出し急いで着替えを始めた。その表情は始終嬉しそうに緩んでいた。鼻歌まで聞こえてきそうだ。

『(スミレちゃんがわざわざ電話をくれるほどだもの。面白いことが起きそうな予感。楽しみ!)』



彼女はまだ気づいていなかった。

王子様と出会う、定められた運命を――
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