頂を目指す二ノ姫

□越前リョーマとテニスの女王様
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するとついリョーマに意識を向けていた桜の耳に、桜乃の素っ頓狂な声が入ってきた。

「えっ!?アメリカのJr.大会4連続優勝の天才少年!?」
「何年かぶりに家族と日本に戻ってきたからこっちじゃまだ無名なんだけどネ。この大会に出場する前、
《お前は実力があるから12歳以下じゃなく14歳以下の部に挑戦してみれば》
と言ってやったら、あやつ16歳以下の部に申し込んでおった。たいしたタマさ」

息を吐き出すスミレの説明に桜乃のみならず高校生も驚愕の表情を浮かべた。


「じゃあアイツが噂の…越前リョーマか!!?」


『へぇ。やるわね』

美しいフォーム、高度な技、ダッシュ力。すべてにおいて突出していて自信があるのも頷ける。それでも大した自信家だが。

『(本当に流石ね……)』
「佐々部!!前に出ちまえよ!遠慮すんな!得意のネットプレー見せてやれ!!
長身のアイツがネットに出りゃあのおチビちゃんには実際打つとこねえんだからなっ」

しかし佐々部にそんな余裕がないのは傍目にもよく分かる。まるで分かっていない外野に桜は目を細め、ある意味佐々部に同情した。

『(それが出来てたらとっくにやってるわよ。けどあんなに深い球を打たれたら前には出られないわよね)』

打ち返すのに精一杯になっている佐々部に高校生たちはようやく焦りを見せ始めた。

「おい…なんかマジやばくねぇ…?草試合とはいえ北高テニス部員が小学生に…」

「ねぇ…得意のネットプレーはやらないの?」

「くっ!!」
「スゴーイ。また決まった…」
「待てよ!今のアウトじゃねーの?」

拍手をして喜ぶ桜乃の言葉を遮って、高校生の一人が声を上げた。
ボールの跡を見ていた佐々部は、何を思ったのか顔を上げ、そして足でライン際にあるであろう跡を擦った。桜の目が細まる。

「バーカ!誰が入ってるって言ったよ…当然アウトだっつーの!!」
「えっ!?うそ!?」
「………」

その次も入っているようにしか見えないにもかかわらずアウトになってしまった。桜乃が思わず声を上げる。

「ズルーイ。今のも絶対入ってる…」

しかし高校生たちに睨まれて何も言えなくなってしまう。桜は頭が痛いとばかりに嘆息した。

『この試合はセルフジャッジで行われているから…彼のコートの審判権利は彼にある』
「そんなぁ…」

桜の説明にがっくり肩を落とす桜乃。一方佐々部は上機嫌になった。

「(やはり浅くなりやがった!これであのガキはもう深い打球は打てない!!)」

それに乗じて前へと詰めた。歓声が上がる。

「見ろ!!佐々部がネットに行った!!もらった!!」
「(これでこのガキも終わりよっ!!)」

そう意気込む佐々部。しかしリョーマは慌てず、佐々部の頭上を大きく超すロブを繰り出した。
しかもそれにはスライス回転をかけており、ボールはライン上で止まる。冷静なリョーマの声が佐々部に向かう。

「ねぇ。今のは入ったの?」
「クックック。小僧め、やりおる」
『楽しそうねスミレちゃん。それにしても上手いわね彼。(あら?もしかして違和感の正体は…)』

何かに気付いたようにリョーマの腕を桜は見た。リョーマはまたもや佐々部がとれない高さのロブを打ち上げる。

「チィッ!!!(ダメだ。届かねぇ!!)」

舌打ちする佐々部とは対照的に余裕な態度のリョーマ。その瞬間、佐々部の苛立ちが最高潮に達し、

彼はラケットを投げた。


「くたばれ!!!」


ガッ!!!


ラケットはリョーマの頭に激突した。瞬間動き出しそうになった体を抑え込み、桜は佐々部を睨みつけた。

『……スポーツマンとして最低ね(…ラケットで人を傷つけるなんて…)』
「ひどい!!何て事を!!!」
「ワリィワリィ。手がすべっちまった!!」

事故を装う佐々部にそれでもリョーマは血を滴らせながら立ち上がった。怪我をしても彼の声は冷静だった。

「ふーん。グリップの握りが甘い…まだまだだね」
『(…いい目をしてる。面白い子……)』
「へっ。口のへらねえガキだぜ」


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