頂を目指す二ノ姫

□始まったランキング戦!
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闇に蠢くモノたちの胎動が始まる
それは交わるハズのない
誰かの物語に過ぎなかった
だがその理も
一人の少女により崩れ去る
与えられた平穏は
いつの日か壊れ往く偽りのセカイ
校内ランキング戦―――――――

それは毎月2・3年全員を4ブロックに分けてリーグ戦を行い、各ブロックの上位二名計八名がレギュラーとして各種大会への切符を手にする戦いのことだ。しかし今回はかつてない空気に包まれていた。本来は参戦することのない、一人の1年の参戦によって。
そして、その戦いの火蓋は切って落とされた。



ちょうどお昼時
桜はマネージャー業が一段落したので大石とともに受付にいた。

『みんなピリピリしてるみたいね。この緊張感はいいことだわ』
「そうだな。これもあの1年のおかげかな」
『リョーマね。っと噂をすれば』

試合が終わったらしいリョーマが他の1年生と一緒にやって来た。彼が来たということは勝ったということだ。

「Dブロック越前リョーマ。6−0っス。メシ食って来ていいっスか?」
「よし。OK」
『調子いいわね、リョーマ』
「どーも、桜先輩」

この数日で桜とリョーマは名前を呼ぶ程度仲が良くなった。しかしリョーマの態度は若干の変化はあるものの相変わらずだ。桜が手塚よりも強いと聞いて度々試合を申し込んでいるが、のらりくらりと躱されてしまうからかもしれない。

『午後は薫とでしょ?頑張ってね』
「ウイース」

桜が手を振ると、リョーマは帽子のつばを押さえて軽く会釈し、昼食を食べに行った。

「随分気にかけてるんだな」

その様子を見ていた大石が桜を横目で見た。

「手塚とは幼馴染みだったからっていうのもあると思うけど事あるごとに心配してただろう?俺や英二、不二なんかも手塚とよく一緒に居ることが多かったから結構見てくれてたよな。それと同じ感じが今の桜からするな」
「それは俺も同感だな」
『貞治』

受付にやって来て大石に賛同したのは乾だ。乾は自身の結果を表に書き入れながら口を開いた。

「今の桜は俺たちが二年前に会った時と同じだな。いや、桃城や海堂が入って来た時とも似ている。今年は越前ということか」

桜は大石と乾に内心舌を巻いた。自分ではそれほど気にしていなかったからだ。

『(結構見られてるのね)そんなこと無いと思うんだけど、そうね。私がみんなを気にかけるのは、何かをやってくれそうな気がするから。そしてリョーマを気にかけるのはね。漠然とした期待感と、あの子が国光に似てるから、かな』
「手塚に?」

大石は一瞬目を瞠って桜の横顔を凝視した。
片や厳格な部長、片や生意気なルーキー。

「(手塚と越前。似てるか?)」
『似てないと思うかもしれないけど、私にはそう見える。だから、気にかけちゃうのかもしれないわね』

桜はそれきり口をつぐんだ。こうなってしまうと桜は絶対話さないので、大石は乾に話しかけた。

「そうか……ところでどうだい?試合の調子は」
「……ああ。ほぼイメージ通りに勝ててるよ」

試合の結果を見るにその言葉通りのようだ。


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