頂を目指す二ノ姫

□始まったランキング戦!
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「でも、あの1年も予想以上にやるな。まだ1ゲームも落としてない」
「お前と同じDブロックだったな。あの子もかわいそうに。おっと、そのノートあんまり近づけないでくれ。苦手でね」

机に置いたノートと距離を置きつつ大石は困り顔になった。大石の反応に桜は思わず苦笑した。だが考えは一緒だ。

『私もそのノートは苦手だわ。何が書いてあるか知らないけど、書かれる方はたまったものじゃないわよね』
「ああ」
「桜の情報は少ないからあまり書いてないよ。もう少しデータを取らせてほしいものだ」
『あら、ごめんなさい』
「出来れば試合がしたいね」

眼鏡を押し上げる乾に桜は心底嫌そうな顔をした。考えるだけで萎えてくる。

『できれば貞治とはあまり戦いたくないわ。厄介だもの。リョーマも大変大変』

ね、と同意を求められた大石も大きく頷いた。

「フフ…―いや、俺より前に…やっかいな相手がいるだろう。

2年に」


その意味を考える前に、その言葉を木の後ろの幹に座りこんで聞いていた海堂は、低い声で唸るように言った。


「ケンカ売ってんスか……先輩」


桜はジロリと乾を見た海堂に笑いかけた。

『あら薫。次試合でしょ?頑張ってね!』
「1年の応援しなくていいんスか?」

後輩に言われた言葉に桜は首を傾げた。何を言われたのかすぐには分からなかったのだ。だが分かった途端花が咲いたように笑って海堂の元に駆け寄った。

『なあに?なんだかやきもち妬いてるみたいよその台詞!』
「なっ!!」

顔を赤くさせて慌てる海堂が面白くて桜の顔は緩みっぱなしだ。

『私はみんな応援してるのよ?誰が勝っても負けても私はみんなを全力でサポートするつもりなんだから。だから、薫も応援するしリョーマも応援するわよ。もちろん秀一郎も貞治もね』
「心強いな」
「そうだな」
「……ありがとうございます」
『ええ…ってなんだか恥ずかしいこと言ったわ……ご飯食べて来てもいい?』
「あ、ああ。いいよ」
『ありがと!』

桜は大石の返事を聞くと脱兎のごとくその場を走り去った。若干顔が赤かったのは見間違いではないだろう。彼女の珍しい反応に大石は驚き、乾は激しくペンをノートに走らせていた。


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