頂を目指す二ノ姫
□始まったランキング戦!
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昼食後
桜は洗濯物を干し終えてリョーマの試合を見ようとコートの方へ来ていた。そこではちょうど桃城の試合が終わりに近づいていた。
『いい感じね、桃。おっと、出るわね桃の十八番』
桃城は大きく上げられたロブを走り跳んで相手コートに叩き込んだ。
「ダンクスマッシュ!!!」
凄まじい速さでスマッシュは相手コートに決まった。
「どーん」
息が上がっている相手に対し、桃城は涼しい顔で勝利した。
『おおっ。勝ったわね桃』
そう喜ぶ桜の背後に二つの影がかかった。
「足の方はもう大丈夫みたいだね。桜が言った甲斐があったって事かな」
「なんだ〜今回は間に合わねぇと思ったのになぁ」
背後に現れた不二と菊丸に桜は振り向いて頷いた。
『私も今回は無理かと思ったわよ。あのバカ試合なんかするからね』
「らしくないね。口調が荒いよ」
不二に指摘されて肩を竦める。それは桜も自覚していた。
『なんか、最近思考が子どもっぽくなってるのよ。おかしなことに』
「桜は大人過ぎだよ!それぐらいがちょうどいいって!!」
菊丸に力説されるが、桜は困惑気味に笑った。それは少々困るというものだ。
「まぁ、確かに桜は大人っぽいよね。流石手塚の幼馴染ってとこかな?」
不二の言葉になんと返事をしたらいいのか桜は言い淀んだ。
『それは…どういう意味かしら?』
「二人とも中学生には見えにくいってことかな」
「……」
『はっきり言うわね……』
桜は不二のあまりの言いように肩を落とした。菊丸も唖然としている。
「でも桜はまだはしゃいだりする時もあるしそうでもないかな。手塚とは違って嬉しい時は本当に嬉しそうにしてるし」
「――…そういえば、"この間の情報の授業でミスらずにデータが保存できた時は歓声を上げて喜んでた"って乾が言ってたにゃ」
『……なんで貞治はそんなことまで知ってるのかしら…?』
桜は口元をひくつかせて情報源の乾を思い返した。情報の授業は乾のクラスからはかなり離れていて歓声など聞こえるはずがないのだ。彼は一体どうやって別のクラスの情報を入手したのだろう。どうして彼女の情報を入手しようと思ったのだろう。改めて乾の恐ろしさを思い知った桜は複雑な表情をした。そんな桜を面白そうに見ていた事の発端の不二は、コートを出て行く桃城とリョーマに視線を移して唐突に口を開いた。
「この次はあの1年生の試合みたいだね。見たかったな」
「俺も」
その二人の言葉に思考の海に沈んでいた桜はなんとか浮上して問いかけた。
『次試合?』
「「そう」」
口を揃えた二人に頑張って、と伝えて桜は試合が見やすい位置を求めて移動した。
結局大石と乾のいる場所がいいと判断した桜は乾を盗み見る。どこからなんの情報が盗られていくか不安だが、この試合は気になる。ということで、先程のことも含め忘却の彼方に追いやり試合に集中することにした。
「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ 越前サービスプレイ!!」
リョーマと海堂の試合は最初からハイレベルなラリーの応酬で、観客と化した部員からも歓声が上がる。桜も自然と笑顔が浮かぶ。
『二人とも立ち上がりはいいみたいね。リョーマは薫のアレ、どうするのかしら』
リョーマは海堂の逆サイドをうまくついてボールを打ち返し、それは決まるかと思われた。しかしリーチの長さから海堂はボールに追いついた。そしてボールを凄い角度でリョーマのコートに返し、逆に点を入れた。
「あいかわらずえげつねぇな。海堂のアレは」
『出たわね「スネイク」』
桜の視線の先のリョーマは海堂のショットに不敵に微笑んだ。
「へぇ…あんな
角度で返すんだ…」
『(なにかやってくれそうね、リョーマ)』
桜は言い知れぬ期待と高揚感に目元を和ませた。
→atogaki