頂を目指す二ノ姫

□女王の怒り
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挑発的に笑うリョーマに海堂は息を瞬間止めた。

「(な、なんだと!?奴の打球は速くなってはいない。まさか俺の反応が…)」
『なかなかの作戦だったわね。リョーマは見込み以上かな』
「あれだけ低く深い打球を毎回足元へ打たれれば、ヒザを曲げっぱなしでショットをさせられた事により…通常の2〜3倍は体力を使うことになる」

その時海堂は膝にかかった負担と体力の限界のため、地面に崩れ落ちた。乾の説明に大石も驚愕している。海堂が落ちたところを見たからかもしれない。すると桜は後ろに気配を感じて振り返り、予想通りの人物が立っていることを確認するとそちらに歩き出す。

『気になってたの?』
「いや。たまたま通りかかっただけだ」

それにしては熱心に見ていたと思うけど、と呟きながら手塚の隣で立ち止まり、海堂の様子を窺った。海堂は今起きたことが信じられないという表情をしてリョーマを睨みつけている。

「(ワナにはまっていたのは、オレの方だったのか…こいつ)」
「海堂がオチた!!?」
「どうなったんだ!?」
「わ、わかんねぇ」
『(すごい声ね。まあみんなには薫が「スネイク」で押してたように見えていたでしょうから仕方ないか)』

1年生三人と一緒に試合を見ていた桃城は呆気にとられていた。

「―一杯食わされたな。マムシは『スネイク』で越前を左右に走らせ相手の体力を奪っていく作戦だった。それに対して越前は…あれだ!!」

桃城はリョーマの打った球を指差した。

「低くて深いライン際の打球を足元へ返し続け…海堂にヒザを曲げさせて低姿勢を保たなければならなくした。そうする事で奴の体力を逆に奪ってたって訳だ!!」

説明を聞き終えた堀尾たちの応援も熱が入る。

「よっしゃーいいぞ越前!!いけー!!」

桜は互いに対峙している二人に複雑な感情が駆け抜けたのを感じていた。それを振り払うように呟く。

『疲れている量は同じでも………相手が隠し持っている切り札に気付いていた者と、土壇場まで自分の優位を信じてそれに気付かなかった者とでは精神疲労度が全然違う』
「策に溺れたな、海堂……」
『…手厳しいわね』

桜の言葉を聞き流した手塚はさらに険しい顔をしてコートを見つめた。視線の先の海堂は厳しい状況に歯を食いしばっていた。

「(オレが疲れているのは認めよう。だが…奴とて同じ!!精神力で1年に負けるようじゃ終わりだぜ!!)」

海堂は必死の形相でサーブを打った。リョーマは不敵な笑みでラケットを構えて、


「……『スネイク』って、“バギーホイップ・ショット”の事だよね?」


「何!?」
『(へぇ。知ってたのねリョーマ)』

狼狽する海堂の目の前で、リョーマはスネイクを披露した。

「ああっあれはー!?」
「………ス」
「『スネイク』ー!!?」
「うそー!?何でアイツが」

歓声と絶叫が沸き上がる中、リョーマは何て事無い表情でいた。


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