頂を目指す二ノ姫

□女王の怒り
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「(こいつ!?『スネイク』が打てるのか!)」
「コレけっこう難しいっスね、海堂先輩。偶然さっき読んでた雑誌に打ち方が載ってたし、実物見たからやってみたけど、やっぱリーチないとキツイや」

その言葉に海堂は驚愕した。

「(――何だと?こいつまさかオレの『スネイク』を見ただけで打っちまったのか!!?まるでアノ人のように!!)」

大石も驚いて疑問を口にした。

「ビックリした。何ショットだって?」
「“バギーホイップ・ショット”
大きなループを下から上に描き、遠心力を利用してボールに大幅なスピンをかける。海堂の『スネイク』はそれを応用した物だ。テクニックがいるから昨日今日では打てないよ」
「(テクニックか…それより気になるのは、越前が明らかに試合慣れしていることだ。それも相当力のある相手と…)」

桜は手塚がリョーマに興味を持ったことを少なからず喜んだ。そうなるとは分かっていても、この出会いが大切なものだと知っているからだ。そこに高らかな声がこだました。

「ゲームセット!!ゲームウォンバイ越前リョーマ 6−4!!」
『(リョーマが…レギュラーを倒した)』

桜はその声を静かに受け入れていた。すると、


ガコッ


予想外の展開にどよめく周囲の音を切り裂く、鈍い打撲音が彼女の耳に入って来た。

「お、おい」
「じ、自分のヒザを…!!?」


バキ バキ バキ


『な、なにしてるのよ薫!』
「………」

いつになく声を荒げた桜に、手塚は眉間のしわをさらに寄せて桜を見下ろした。目を見開き、手を震わせた桜の姿は手塚の記憶の扉を叩いた。



『なにしてるんですかっ!!あなたたちは、テニス部員でしょう!!!』


『ラケットは、テニスは、あなたたちにとってそんなものなの!?』




「(あの時以来だろうか。桜のこんなに険しい表情を見たのは……)」

海堂はリョーマとの握手を無視してコートから出てきた。他の部員が避けて出来た道をまっすぐ、大石と乾に向かって進む。

「海堂…」

心配そうな大石の脇をすり抜け、海堂は乾に宣戦布告した。


「レギュラーの座は…諦めねぇ…!絶対に…!」


足を引きずりその場を離れていく海堂に、桜は我慢の限界に達し走り出した。

『薫!!』

そして鋭い目つきで自分を見下ろす海堂に、手を振り上げた。



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