頂を目指す二ノ姫
□女王の怒り
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越前リョーマVS海堂薫。
序盤から海堂の得意技、スネイクがリョーマに牙をむいた。
『(右足から左足へ体重が移動する瞬間にラケットを大きく振り抜き、異常なスピン回転をかけるショット…)リーチが長い薫だからこそ出来る超角度ショット。それがスネイク。また精度を上げたわね』
桜は楽しそうに海堂を見据えた。
一方海堂は、リョーマの打つ球に感心していた。
「(ほう…この1年。ライン際に低く深い良いショットを打つな。しかし…!!この俺には関係ない!)」
「また出た『スネイク』!!」
大きく円を描く球をリョーマは拾うのがやっとだ。そして、
「フィニッシュ」
一際キレのあるスネイクを海堂は繰り出したが、リョーマは驚異の身体能力で追いつき打ち返した。
「すげぇ。追いつきやがった!!」
しかしボールはラインからは出てしまった。
「アウト!!」
「惜しィ」
「しかもお互い一歩もゆずってねぇ!!」
興奮している様子の荒井を海堂は睨みつけ、荒井はその眼光にたじろいだ。リョーマは軽く息を吐き出すと、
「今日は暑いっスね……先輩」
おもむろにそう口にした。桜はリョーマの表情を見て何かを感じ取った。彼は不敵に、笑ったようだった。
『(リョーマは気付いてるかな?薫の本当の狙いに…)』
「桜は海堂と越前。どっちが勝つと思うか?」
唐突に乾に話しかけられ、桜は一瞬驚いたもののすぐに困惑の表情を見せた。
『どっちって。そんなもの分からないわ。どちらが勝ってもおかしくないとは思ってるけど』
「フム。やはりそう返すか」
『分かってたなら聞かないでよ』
疲れたような声を出すが、乾はどことなく嬉しそうだ。取り出したノートにペンを走らせる。
「実証してこそ意味がある」
『あ、そう』
相手にするだけ疲れると判断して桜は試合に意識を戻した。海堂は目の前で素早く動くリョーマに驚いていた。
「(なんてフットワークだ…オレのフィニッシュショットを返したのはこれで三人目。たしかにとんでもない1年だ。桜先輩が気にかけるのも頷ける。だが、それが命取りなんだよ!!)」
試合は海堂が主導権を握っていた。海堂の思惑通り、スネイクを多用することによってリョーマを走らせ、彼の体力を大幅に削ることに成功していたからだ。リョーマの息も乱れてきている。
「(さあ、そろそろ堕ちるハズ…!!)」
だが海堂の思惑とは異なり、リョーマは堕ちることなくライン際にボールを打ち続けている。
パァァァン
「(またライン際か。バカの一つおぼえみてぇに)」
海堂も懸命にスネイクを打つが、そのキレは鈍く息も荒くなっている。しかしそのことに気付いていない。
『(やるわね、リョーマ)』
桜の目にはもう勝敗が見えていた。
「(おかしい…奴の体力はもう限界なはず…なのに奴の打球がどんどん鋭く…重くなってきている!?バカな、そんなハズ…)」
「ねぇ、海堂先輩もすごい汗だね」
今気付いたかのようにリョーマは海堂に話しかけた。口角を上げて不敵に笑う。
「そろそろその上着、脱いだら?」
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