頂を目指す二ノ姫

□高き壁
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Aブロックコート
コートを埋め尽くす凄まじい黄色い歓声の中、手塚国光と大石秀一郎の白熱した試合が展開されていた。桜は部長と副部長の見たかった試合に足を止め、一球すら見逃さないといった様子で見守っていた。自分がリクエストした試合でもあるためマネージャー業もそっちのけである。近くにいた井上と芝に話しかけることも忘れて見入っていた。

「はっ」
「はっ!」

ボールを追いかける二人は桜の胸を熱くさせた。

『(ただボールを追いかけて打ってるだけなのに、かっこいいわね)』
「中学テニスってこんなにすごいんですか?」

芝は酷く驚いた様子で井上に問いかけた。

「青学は特別だ。大石君も力をつけてきたな。手塚君と桜ちゃんの力で立海大付属中に挑めるいいチームになってきてる。今年青学は強いぞ!ん?」
「手塚君ステキ…」
「こらっ芝。何考えてんだお前は!!」
「えっ、あははは…」
「ったく」
「で、でも井上先輩だって、昨日桜ちゃんに見とれてたじゃないですか!」
「なっ!そんなわけないだろう!!」
『(…Dコートはどうなってるのかしらね……)』

このまま二人の試合を見ていたかったが昨日のこともあり、桜はリョーマと乾の試合が行われているDブロックコートへと足を進めた。気付かないうちに少し早足になっていた。





Dブロックコート
レギュラーを倒した1年と3年レギュラーの試合に、何とも言えない緊張感が漂っていた。

「いよいよ3年レギュラー乾先輩とかぁ」
「勝てたら越前君はレギュラー入り!!」
「乾先輩って強いのかな」
「強いよ。3年の中でも強い。ここ半年間レギュラーから落ちたことないしね。ちなみにオレは苦手だね」

1年トリオの後ろに現れた桃城は真剣な表情で言う。堀尾たちの表情が強張るなか桃城は続けようとするが、

「おーい桃。おチビちゃんの試合見てんの?」
『あら?桃なんでここにいるの?英二も』

やって来た菊丸と桜に遮られた。桃城は嬉しそうに二人を振り向き、コートを指差した。

「あっエージ先輩、桜先輩。これからっス越前の試合!楽しみで…」
『だから、何言ってるの桃?』
「そうだよ。お前、今から試合だよ。オ・レ・と」

桃城は目を点にして菊丸に素っ頓狂な声を上げた。

「ええっ!?ウッソォ!!」
「残念無念また来週〜。じゃあ桜、行ってくんね!!」
『ええ。頑張って!』
「ちょっ、そりゃないっスよ〜」
「…行っちゃった。あの、神崎先輩」

菊丸を追いかける桃城を眺めていた桜にカチローはおずおずと声をかけた。

『あら。桜でいいわよ?』
「じゃ、じゃあ桜先輩!あの、先輩は行かなくてもいいんですか?」
『どこかに行く予定はないのだけど…ここにいない方がいいかしら?』

憧れになりつつある桜の困ったような表情に、1年トリオは狼狽した。

「「「そ、そんなことないです」」」
『そう?良かった。リョーマの試合が気になっててね。みんなには悪いんだけどこっちを見ることにしたのよ。だから一緒に見ない?』
「「は、はい!!」」
「お、おい。見てみろよ」

堀尾の言葉にコートへ視線を移すと、ネットを挟んでリョーマと乾が立っているところだった。

「あんなに身長が違うぜ」
「まるで大人と子供みたいだね」
『うーん。リョーマは151cm。貞治は184cmってとこかな。33cmの差ね』
「見ただけで身長が分かるんですか!?」

驚く後輩に桜は笑って頷いた。

『ええ。後は女のカンだけど』
「お、女のカンって……」

何とも言えない表情をする1年をよそに、桜はリョーマの顔色を見ていた。昨日のことが脳裏を過る。

『(朝会った時も別段変なところは無かったし、しっかり忘れているみたいね、良かった。霊圧もちゃんと変容されてるし問題なさそうね。まぁ代替記憶がどうなったかは気になるけど。というかリョーマ、風邪引かなかったかしら)』

そんなことをつらつら考えていると、試合は始まった。サーブは乾からで、長身から放たれるボールはかなりの球威とスピードを持ってリョーマに向かって行った。

「放った瞬間にはもう越前の所に届いてるって感じだ。強烈〜!!」


パァァン


リョーマがボールを危なげなく打ち返した時には乾は走り出していた。

「ネットにつめて来るぞ!!」
「うまい!プレーに全く無駄がない!!」
『(相手が貞治じゃなかったら狙うんだけど)』
「(抜ける!!)」

そう確信して、リョーマはネットに詰めてきた乾の左に打ち返すが、

「ハズレ」


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