頂を目指す二ノ姫
□高き壁
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「…………」
カッ
「フォ――ルト!!」
「サーブのコースも調査済みってわけ?」
「…今のフォルトは予測できなかったよ」
静かな声に桜はつい吹き出した。リョーマらしい。
「何!?越前のやつ今のファーストサーブ、ワザとネットにかけたんっスか?」
『そういうことだと思うわ』
「負けず嫌いだね」
不二もつられて笑った。負けず嫌いにも程がある。
Aブロックコート
「でた――っ部長の伝家の宝刀ドロップショット!!」
「ゲームウォンバイ手塚 6−1!!」
女子の歓声が一際強くなる中、手塚と大石の試合は手塚の勝利で終わった。手塚はフェンスの外に視線を向ける。
「(桜は、あの1年の所か)」
手塚はコートを見まわして桜の姿が無い事を確認すると、小さく息を吐いた。それを大石は見逃さなかった。
「桜はいないね。見たがってたのに」
大石は首を傾げた。そもそもこの試合のオーダーは桜の言葉がある意味発端だった。
「他に気にかかる事が出来たんだろう。多分あの1年の所だ」
「そうか。桜はかなり気にしてるみたいだしな。あの1年の事を」
「ああ」
頷いてコートに向かう手塚の後を大石は追いかける。
Dブロックコート
リョーマは乾に苦戦していた。
パァァン
「ハズレ」
乾はどこに返されても拾い、点を取っていく。
「さすが乾さん。今日は特に冴えてるんじゃないか」
「ああ」
「試合データやプレイパターンに基づいて、相手との対戦を何度も繰り返しイメージする…」
「パワーやテクニックなどの派手さはないけど…詰め将棋の様な穴のないテニス」
ここでリョーマはロブを打った。鮮やかなロブで歓声が上がる。
「オオッうまい。乾さんの頭の上を…」
『同時に貞治が2歩さがった』
「そしてあの長身――」
「届いたっ!?」
「あのロブでもだめなのか――っ!!乾さん絶好調だ!!」
観客が沸くが、堀尾たちは絶句していた。
「あれ届くかフツー…越前がスマッシュエース決められるなんて初めて見た……」
「ここではあると思っていたがたいしたロブだ。俺との身長差を考えてギリギリの所を狙ってきたな」
「………」
乾の滔々とした評価にリョーマは黙り込んだ。その目は探るように乾を見ていた。
「君は俺よりテニスのセンスもある。ハッキリ言って強い!…けれど…―どんなにいいショットでも、返ってくる場所さえわかれば…打ち返せない球はないよ」
乾は眼鏡を押し上げ堂々と宣言した。それは乾の誇りでもある持論だった。
「いずれ君は青学のレギュラーになるだろうけど、今回は勝たせてもらう」
桜は眉間にしわを寄せて乾を見ていた。それに気付いた不二は桜に話しかける。
「なんだか不満そうだね」
『そりゃあね』
「例え返ってくる場所がわかっても、取れない球はあるってことかな?」
その問いに曖昧に笑って桜はリョーマを見た。同時にカチローの声が耳に入って来る。
「リョーマ君見てよ」
桜の視線の先のリョーマは、生意気な表情で不敵に笑っていた。
「青学に入って良かったよ。
色んなテニスを倒せるからね」
→atogaki