頂を目指す二ノ姫

□不敵に笑う生意気なルーキー
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「!?」
「右!?」

その言葉通りにリョーマの打った球は右に向かっていき、乾は驚いたものの危なげなく拾った。

「(かく乱作戦か!?そんな手には乗らない…)」
「次は左ね!!」

もう次のモーションに移っているリョーマを見て乾は疑問を抱いた。

「(戻りが早いのか!?)」
「越前の奴とうとうヤケ起こしやがった――っ!!打つとこ教えてどうするんだよっ!!」

堀尾が頭を抱える後ろで、桜は顎に手を当ててリョーマのステップを感心したように見つめた。

『(へぇ。出来るのねリョーマ。本当、楽しませてくれるわ)』
「ロブを上げるよ」
「越前の奴、乾さんばりにポジションに着くの早くなってないか!?」

宣言通りにロブがくると判断したのか瞬時に下がった乾は、先程同様ギリギリのところに打たれたロブを打ち返したが、

「今度は左いくよ」
「!」
「乾先輩の横を!」
『へぇ!』
「きれいに抜けた!?」

乾の横を通った球は線の外でバウンドした。

「アーウト!!」
「なんなの、あの子…」

芝はあんぐりと口を開けてリョーマを凝視した。その芝の反応に桜乃と朋香は顔を見合わせてニヤリと笑い合う。

「ちょっと焦ったか」

リョーマはプレイで落ちた帽子をラケットで引っ掛けて頭に乗せた。ミスを全く気にしていないリョーマはどこか楽しそうだ。

「まだまだだね」

そして唖然とした表情で立ち竦んでいる乾に向き直り口の端を上げた。

「さすが乾先輩…アウトになるの読んでたんでしょ。来る場所がわかってたら返せない球はないもんね」
『(すっごい皮肉。貞治は読んでたんじゃない。動けなかったのよ)』

桜は乾を注視した。その顔には冷や汗が伝っているように見える。

周囲が騒然とする中、芝はずっと茫然としていた。

「あの子一体…3年のレギュラーと互角に打ちあうなんて……まだ仮入部よねぇ1年生って?」
「あ、はい」

そこに眼を瞠ってリョーマを見つめた井上が現れた。

「そんな事より芝…見たか?あのステップ!!」





「「スプリットステップ…ですか?」」
『ええ、そうよ』

聞き慣れない単語にカチローとカツオが同時に聞き返した。桜と不二はにこやかに頷く。

「お前ら、そんな事も知らねぇでテニスやってんのかよ〜」

得意げな堀尾が偉そうに説明しだした。

「テニスの基本中の基本だぜ!!相手が打つと同時くらいに…軽く上に飛んで両方のつま先で着地する事だよ!!それをやると半歩早くボールに反応出来て次の足が踏み出せるんだ」
「何で?」
「それはほら、アレだよ…」
『筋力の収縮の反動を利用して、ダッシュにつなげるのよ』

返答に詰まった堀尾の代わりに桜が口を開いた。桜の後を不二が続ける。

「スタートが半歩早くなれば…1m先のボールに届く!!」
「次は左に打って…前に出るよ」
「おお――っ初めて越前が攻めに転じた!!」

不二はリョーマのステップを見て、次に桜を見た。

「(…そう。スプリットステップ自体は基本中の基本…でも越前君のステップは桜と同じ…)」
「あっ本当だ。あれがスプリットステップ!!」
『ええ。あのまま両足で着地すればね』

そう。リョーマは両足で着地するところを片足で着地していた。そのため、

「あ――っもう追いついてる!?」
「右に打つよ」


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