頂を目指す二ノ姫

□不敵に笑う生意気なルーキー
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ランキング戦が行われているコートへ駆け足で向かう二人の女生徒。そのうちの一人が後ろをついてくるもう一人を急かして手招きした。

「もう桜乃、はやくはやく!」

長い三つ編みが特徴の竜崎桜乃は、前を行く自分の名前を呼んだ友達を必死に追っていた。

「ま、待って朋ちゃん」
「<私の>王子様の試合、終わっちゃうよ!」

私の、というところに力を込めた少女。自称越前リョーマファンクラブ会長の小坂田朋香は受付に走り寄った。

「スミマセーン。1年の越前リョーマ君、今どこのコートで試合やってるんですか?」

楽しげに高い声でそう問いかけた朋香。しかし受付に座っていたのは昨日リョーマに負け、桜に怒られた海堂だった。海堂は機嫌悪そうに鋭い目つきで朋香を睨みつける。

「あ」
「(なにこの人コワ〜〜〜っ)」

それでもリョーマの勇姿をこの目で見たい二人は、なんとかコートを聞き出してすぐにそこを離れた。受付が見えなくなると二人は揃って胸を撫で下ろした。

「一番奥のコートみたいね…あー怖かった。どうりで誰もあの受付に近づいてないと思った」

朋香が口をとがらせて呟くと、前を見た桜乃が声を上げた。見覚えのある姿が映ったのだ。

「あ。月刊プロテニスの…」
「あら。昨日はアリガト」

そこには、カメラを携えた芝が立っていた。桜乃は昨日彼女に道を教えていて知り合いだったのだ。朋香は月刊プロテニスと聞いて色めき立った。

「えーっもうテニス雑誌の取材きちゃったんだー」
「フフ。そうよ」
「リョーマ様の取材ならこの私を通してもらわないと!」

まるで自分の事のように胸を張った朋香に芝は首を傾げた。

「リョーマ様?」
「…の取材でしょもちろん。ホラ。一番奥のコートでやってるよ」

キャ〜〜〜〜と歓声を上げた朋香が指をさした先にリョーマの姿を認めると、芝は驚きの声を上げた。

「あっあの子!?かわいそう。相手はレギュラーじゃない。何で1年生が?人数合わせかな。一丁前にテニスウェア着ちゃって」
「――でも、受付にいた海堂さんっていうレギュラーの人に昨日勝ってましたよ」
「え〜〜〜!?まっさかぁ!」

芝はムッとする朋香を尻目に大げさに驚いた。





一方コートはリョーマの放った一言にざわついていた。

「『色んなテニスを倒せるから』という事は…」
「この試合、越前のやつひっくり返すつもりだ!!」
『うわ。言うわねリョーマ』

新しいおもちゃでも貰ったかのように楽しそうにリョーマを見つめた桜を不二は横目で見た。ついつい笑みがこぼれる。

「楽しそうだね、桜」
『ええ。リョーマは何かをやってくれそうな気がするのよねぇ。2年前あなた達と出会った時みたいだわ』

その言葉に不二は一瞬虚をつかれたように目を開くと柔和に微笑んだ。乾はリョーマに動じずサーブを打つ準備を始める。

「たのもしい1年だ!!けど…確率は変わらないよ」

するとリョーマは軽くジャンプし始めた。

「最近やっと出来るようになったステップがあるんだけど…できれば温存しておきたかったね。


全国大会まで!!」


周りはリョーマの爆弾発言でさらに喧騒に包まれた。

『すごい』
「あいつ」
「ぬかせ」


ドッ


「でたぁ―――っ高速サーブ!!」
「また乾先輩のサービス&ボレーのえじきだ!!」
「(越前はどっちに打つ?確率的には…)」
「ああ…面倒臭いからもう予測しなくていいよ」

走り出した乾に、ラケットを構えながらボールを追いかけたリョーマは宣告した。不敵な笑みを浮かべて、短く一言。


「右に打つから」



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