頂を目指す二ノ姫

□進む地区予選!
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鈴音山対柿ノ木コート

桜は手塚、不二と連れだって柿ノ木の試合を見に来ていた。桜はあまり乗り気でなく表情を曇らせていた。その原因の元はドヤ顔で対戦者に言い放った。

「お前は決して弱くない。オレが強かっただけの話だ!!」

そう鼻高々に宣った柿ノ木中テニス部主将 九鬼貴一。仏頂面で見ている桜とは正反対に、不二はいつもの笑顔で九鬼を見ていた。

「でた、名ゼリフ。絶好調だね。九鬼君」
『…柿ノ木中は神奈川代表の立海大付属中と何度も練習試合を組んでいたそうよ』
「ああ。切原君の…」

と不二が納得したところで、桜の眉間に手塚並のしわが寄った。普段露骨に嫌な表情を出さない桜にしては珍しい変化だ。それもこれも話題の中心である九鬼がやって来たからだ。

「よう手塚・不二、それに神崎。そろって敵視察かよ。収穫はあったかなっ」
『(…どうかしてるわ、私。こんな何百と年下の子ども相手にこんな事思うなんて…でもダメね。この子本当に苦手だわ)』

顔を盛大にしかめた桜は手塚の背後に隠れた。ジャージの裾を握っているその行動はどこか子どもっぽい。
そんなことは気付いていないのかどうでもいいのか、構わず九鬼は話し続けた。

「―そういや手塚。玉林戦に出なかったらしいな………いや本当は出れなかったんじゃねぇのか。神崎が止めてよ!」
「行くぞ不二、桜」

やけに自信ありげに言う九鬼を手塚は無視して踵を返した。桜はそれにいそいそとついて行く。一刻も早くここから離れたいのだ。しかし九鬼がそのまま見逃すはずがない。

「待てよ!腕を見せてみろよ。何か理由が…」


「放せよ」


腕を掴んだ九鬼に手塚は静かに言い放った。その横で桜がジト目を向けている。

「(ビクともしねぇ…!)」

手塚の静かな物言いと桜の目に気圧された九鬼をその場に残し、三人はその場を後にした。





青春学園対水ノ淵中の準決勝

青学レギュラー達は確実に試合を決めていく。ただし…

『(この子を除いてね)』

桜に見下ろされたリョーマはふてくされた顔をして沈黙していた。玉林とのダブルスの罰として準決勝はリョーマが、決勝は桃城が謹慎処分を受けているため補欠なのだ。

『ちょっとリョーマ。そんな顔してないで』
「……」
「リョーマよ。まだスネてるのかい
人の試合を見るのも勉強じゃ。ホレ応援ぐらいせんか」

それでも黙っているリョーマに桜はにぃぃぃぃっこりと擬音がつきそうな勢いの笑みを向けた。反射的にリョーマが仰け反る。

『あらリョーマ。応援もしないで無視するなら練習量を倍にす「青学ファイオー」分かればよろしい』
「(さすがだねぇ)」

スミレは目を細めて桜の満足そうな表情を視界に収めた。



こうして青学はリョーマ補欠で決勝へと駒を進めた。



もう一方の準決勝で波乱が起きていたことはまだ誰も知らない。



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