頂を目指す二ノ姫
□進む地区予選!
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「《――ゲームセット!!ウォンバイ青学6‐2!!》」
玉林との波乱のダブルスの試合はなんとか終わった。桜も全身の息を吐き出すように深く溜息をついて審判のコールを聞いた。
「あれで勝っちゃったよ。あの二人」
「ハハッ。真ん中だけダブルス…」
不二は面白そうな、河村は呆気にとられたような表情をしている。こんなバラバラなダブルスでよく勝てたと内心呆れているのだろう。桜自身も呆れていた。
「とんでもねぇなお前らは」
「言ったろ?オレ達のみこみ早いし、最強のコーチがついてるってな」
得意げな桃城に泉と布川は呆れ顔だ。
「…ったく口のへらねぇ奴だ」
「まっいいや。またダブルスやりたくなったらいつでもストリートテニス場に来い」
「ああ」
「もうコリゴリだけどね」
爽やかに笑い合う桃城と玉林に水を差すようにリョーマは顔を背けてぼそっと零した。
握手を交わして青学側に戻った桃城とリョーマを、二つの恐怖が待っていた。
「バカモノ。勝てたからよかったようなものの!」
「イテテテ!」
スミレに頬を抓られて涙目になる桃城とリョーマ。そんな二人に桜が追い打ちをかける。
『あなたたち。私の言ったこと忘れたわね!心臓に悪い試合して!正座してなさい!!』
「「は、はい!!」」
有無を言わさぬ桜の剣幕に桃城とリョーマの体は即座に反応した。言われた通りにする二人に周囲は笑いの渦に巻き込まれる。
「おい見ろよ!青学の選手。勝ったのに正座させられてるぜ」
「「((もう二度とダブルスはやらない))」」
そう心の中で宣言した二人はさっさと試合が勝利で決着がつき、早々に正座を終わらせたいと願った。その願いはあっさりすぎるほどあっさり終わった後の試合により叶えられた。
「《ゲームセット!!ゲームウォンバイ青学6‐0!!》」
「強ぇ――!!あっという間に終わっちまった!!さすが青学黄金ペア!!」
『さすが秀一郎と英二ね』
「さっきのが青学ダブルスだと思われたら」
「困るからね」
『そうね。お疲れ様』
貫録を見せつけた大石と菊丸に桜は笑顔でドリンクとタオルを手渡した。これが青学のダブルスである。
『じゃあ、頑張って』
「…はい」
海堂の対戦相手である玉林の選手は海堂にビビっていた。弱腰の相手では海堂の敵にはなりえない。
シングルス3も6‐0で快勝した。
シングルス2の河村に、桜はにっこりと笑って見せた。
『自分を信じて、頑張ってね!タカさん!』
「あ、う、うん」
どこか頼りなげな河村に玉林側はこれなら勝てるだろうと意気込んだ。しかしそれは大きな間違いだった。
「タカさんほら忘れもの。元気の素」
「あっゴメン大石……」
「こいつラケットも忘れてるぜ」
テニスの試合をするというのにラケットを忘れる河村。大石から渡されたラケットを受け取る河村を玉林選手は笑うが、
「かあああっ!!よっしゃあ!燃えるぜバーニング!!」
「(ビクッ)」
「ぬどりゃあっ!」
優しげな相貌を一変させ、いかつい顔でラケットを振るう河村に相手の選手は驚いた。テンションが高い性格になってしまった河村に、桜も慣れているにもかかわらず苦笑してしまう。
『(本当、すごい変わり様よね。二重人格みたい)』
「《ゲーム6-0!青学 不二!》」
「勝ったよ桜」
『あまり疲れてなさそうね。涼しい顔しちゃって』
「そんなことないよ」
不二は本気なのか冗談なのか判断がつかない笑顔をずっと浮かべていた。
「《ダブルス2勝シングルス3勝
よって―――5勝0敗で青学の勝ちとします。礼!!》」
「「「ありがとうございました!!」」」
こうして緒戦はダブルス2で多少まごついたものの、全勝で終了した。
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