頂を目指す二ノ姫

□リョーマのシングルスデビュー
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「それよりさあ…何て技なのそれ?
なーんかプレー中に腕が

一時的にマヒするんだよね!!」

しかし不利な状況は継続中だ。伊武の「スポット」がリョーマを容赦なく攻め、ついにサービスゲームを落としてしまった。
ゲームカウントは4−1で青学リード。

「(伊武深司か。これほどの逸材が不動峰にいようとは)」
『(天性のテニスセンスだけでいえば青学の上位レギュラー…周助に勝るとも劣らないわね。橘君といい彼といい、厄介な相手だわ)』
「……越前、がんばれ!」

腕時計を握り締めた大石がそう呟くのを聞いた桜は、もう1ゲームを取られたリョーマを見つめる。リョーマの死角になってしまった左側ばかりを攻める伊武に、とうとうリョーマは4−3まで追いつかれた。

いいよなぁ。同情票集めてさぁ。でも自分から言い出したことだから最後まで…
「ねぇ…独り言中悪いけど早くサーブ打ってくんない?

あと3分ちょいでアンタを倒さなきゃなんないんだから」

リョーマの言いように伊武の目がつり上がる。

「しぶといなあ!」
「やーな技だよね、その上下のショット!…でも弱点2つ見――っけ!」
『へぇ』
「何!?」

その余裕の笑みに橘も驚いた。リョーマは返って来た打球を右手に持ち替えたラケットで打ち返した。

「二刀流相手にためしたことある?」
「あ――っ今度は左手で!?」
「二刀流!!」
「バカなっネットプレー時に相手の打球を判断して…ラケットを持ち替えるなんて不可能だ!!」

誰もがそんな神業は無理だと叫ぶ。しかし桜と橘は違った。

「一本足でのスプリットステップ…あんな驚異的なことが出来るならば瞬時にラケットを持ち替える事など造作もないハズだ」
『跳んでる一瞬で相手が打つ方向を判断することが必要なあのステップ。足の動きが手に変わっただけだからリョーマには簡単ね』

「これが弱点その1」

「(ムカツク奴!!何が二刀流だよ!
両腕ともマヒさせてやる!!)」

苛立った伊武はしかし一向に腕を麻痺させられないでいた。

「あれ?さっきから下回転(スライス)ばっかり…上下回転を交互に打たないとスポットにならないんですよね…」
「体の正面に来る滑る打球を上回転(トップスピン)で返すのはまず無理だ。打たないんじゃない………打てないんだ」


「ねぇ…上回転(トップスピン)まだ?」


『……リョーマったら性格悪いわ』

桜はかなりの汗をかいて苦悩の表情を浮かべる伊武を見て苦笑いを浮かべた。出させない張本人が何を言うか。

「(深司のスポットさえも出させない!?あのケガで…何て奴だ!!)青学の…越前リョーマ!!」

その時、伊武はラケットのフレームにボールを当ててしまい、勢いのない打球が上がってしまった。それは誰であっても、リョーマであれば当然のチャンスボールで、


「よし越前!青学の優勝は…お前の手で決めろ――っ!!」


マッチポイント。
チャンスボールの上がったリョーマは渾身の力でスマッシュを打ちこんだ。それにコースを読んでいた伊武が追いつくが、

「なっ(逆回転ー!?)」

顔面に跳ね上がってきたボールを伊武は咄嗟に手で掴んでしまった。桜はフゥと息を吐いてフェンスに背中を預けた。


「《ゲームセーット!ウォンバイ青学 越前っ!!》」


「………10分。間に合った?」
「本当にやりおった…あの小僧」
『ほんと、頼もしいわ』

桜は胸に手を当てて息をついた。心臓に悪い試合だったことは否定できない。



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