頂を目指す二ノ姫
□リョーマのシングルスデビュー
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おまけ
桜は青学が撤収作業をしている中、手塚の許可をとって不動峰を訪ねた。どうしても橘と話しておきたかったからだ。同じように撤収作業をしている橘を見つけた桜は彼に近づいた。橘の傍らには可愛らしい女の子がいた。
「あっ神崎桜さん!!」
『私を知ってるの?』
橘よりも先に桜の存在に気付いた少女は目を輝かせて桜の名前を口にした。桜は怪訝な表情で見つめ返す。
「はい!神崎さんはテニスをする女子にとってあこがれですから!」
力説された桜は困った表情をして曖昧に笑った。羨望の眼差しはくすぐったくて申し訳ない。
『そんな大層なものじゃないわ。ところで貴女は?』
「あ、私橘杏です」
「俺の妹だ」
『杏ちゃんね。私のことは桜って呼んで』
「本当ですか!」
『ええ』
「あっじゃあ桜さん!!」
元気に答える杏に桜はにっこり笑い、そしてやりとりを黙って聞いていた橘に向き直った。
『今日はいい試合をありがとう。結果的にはケガ人多数なんだけど、色々考えさせられたし、驚かされたわ』
「こっちも見抜く者…いや『脚本家』のオーダーには驚かされた。そして敏腕マネージャーぶりにもな」
『ありがとう。不動峰にもいい選手が多くて私も驚いたわ。あなたの部長としての統率力にもね』
そう言って笑い合い手を握り合った。手を離した桜は橘に爆弾を落とした。
『九州と違って東京はどう?』
「…やはり気付いていたか」
苦笑いした橘に桜は肩を竦めた。
『すぐには分からなかったけどね。貴方がこっちに来るなんて予想外だったけど、負けないわよ。彼らは』
「いや。今度は俺達が勝つさ」
仲間の勝利を信じて疑わない二人はそう言って笑い合った。
「神崎もまた都大会で」
『ええ。私は戦わないけど』
「いや、戦ってるさ」
橘の横で杏も真剣に頷いた。その言葉の裏にある意味に桜は柔らかく微笑んだ。
『ありがとう』
「!!あ、ああ」
『それじゃ、またね』
「………ああ、またな」
「またお話させて下さい桜さん!!」
『いつでも大歓迎よ』
こうして地区予選は本当に幕を閉じた。
→atogakizadannkai