夜空を纏う四ノ姫

□ディーノ再び
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『(やっぱり最初の読み通り、鍛えたら結構いいところまで行くかも)』


嬉しい誤算に桜は表情を綻ばせた
すると、唐突に耳障りな野太い声が桜の耳に入り込んできた


「何してくれてんだ?ガキどもが…」


声は、これまでとは明らかに格が違う輩を引き連れて現れた組長のものだった


「のヤロー次から次へと…」

「おい待て。さっき倒した若い衆とはわけが違うぜ
おまえじゃまだムリだ」


ディーノはいきり立つ獄寺を制して前へ出た


「オレはキャバッローネファミリー10代目ディーノだ
こうなったのはすべてオレの責任だ。悪かったな
全員の治療費と備品の修理費は払う。それで手を打ってくれ」

「はっ?ファミリー!?
何わけわかんねーこと言ってやがんだ?ココは日本だぜ?」

「チャラチャラしやがって!」

「金はいただく。そしててめーらとそこの女は帰さねぇ!」

『あら?』

「へぇ。かなりの上玉じゃねーか」


すると、桜は背後から現れた仲間に刃物を突き付けられた


「桜!!」

『あらあら』


しかし対して桜は焦る様子も見せない
ディーノは苦笑いをこぼした


「(桜の奴、わざと捕まりやがったな
あいつが気配に気づかねーわけがねぇ)
交渉決裂か。じゃあ力ずくで帰るしかねーよな
桜も返してもらう。いくぜっ」


しかし部下のいないディーノは自滅する
巻き添えを食らった獄寺と山本も痛みに蹲った


「ヒャハハハハ!!なんだこいつ。自爆しやがった!!」

「アホだ」

『(後でお説教決定。それよりなんかムカツクわ)えいっ』

「ギャァッ」

「Σええっ!!」


桜は自分を掴んでいる男が気持ち悪くなり、またディーノを貶されたことにイラッときた
自分で思うのはいいが他人に言われるのは嫌なのだ
男の足の甲をローファーの踵で踏みつけ、拘束が緩んだすきに鉄拳を喰らわせた
男は悲鳴を上げて壁まで吹っ飛ばされた


「なっ!!」

『ディーノはほんとまだまだね
へなちょこが抜けてないわ
後で覚えておきなさいよ』

「何言ってやがるこのアマ!!!」


そう言ってヤクザたちは得物を振り回して桜に襲いかかった


「さ、桜!!」

「あぶねェ!!」

『ジャマ!!』


桜は刀を避けて回し蹴りを食らわせ、上段から斬りかかって来た男を躱して下から顎を突き上げる


『あ〜、ちょっと面倒くさいかも…』


そう呟いて桜はスカートをめくり、大腿部に取り付けてあったホルダーから大きめの扇を取り出した
それを見たディーノはハッとして叫んだ


「あ、あれは紅染戦歌!!

「あかぞめせんか?」

「ああ。桜の使う武器の一つだ」


黒と紫の美しい扇を広げると、そこには風に流れる桜と数羽の蝶が飛んでいる様が描かれていた
武器と言うにはあまりにも風流だ


「なんだぁそりゃあ!舞でも踊ってくれんのか!?」

「ギャハハハ!!」


品のない笑い声が室内に響き渡る
バカにしたようなヤクザたちを気にも留めず、桜は優雅に微笑んだ





『ええ。その通りよ』





桜は後ろから斬りかかって来る男を分かっていたのか振り上げた扇で刀を受け止めた
驚愕の表情で男はギリギリと刀に体重を乗せるが、受ける桜の腕はビクともしない
男女の間に確実に存在する力の差を彼女は全く感じさせなかった





『夜叉姫、舞いる』





不敵に笑って、いまだに体重を乗せてくる男から一瞬のうちに抜け出す
そのまま流れるような動作で回転して扇で殴打した
ふわっと飛びあがり桜の背後を取ろうとした別の男の背後を逆に取って扇で斬りつける


『ちなみにコレ、分かってると思うけど鉄扇よ』


まさに舞を舞うかのような洗練された動きで次々とヤクザたちを沈めていく桜の姿に、ツナたちは思わず見惚れた


「キレイ…」

「これが、夜叉姫の実力…」

「まあ桜の実力はこんなもんじゃねーし、その名の由来じゃねーけどな
鉄扇で戦ってる時の桜は『黒舞姫』なんて呼ばれてもいたな


なんにしても、これがボンゴレの姫、桜だぜ」


『風舞―――――――血染め桜』


桜の言葉と同時に組長は全身に切り傷をつけられその場に倒れ込み、立っているのは桜だけとなった


『お仕舞い』


パチンと扇を閉じて桜は妖艶に微笑んだ



こうして桃巨会は壊滅した―…
そして二日続けてディーノは桜にこってり絞られた
ちなみにリボーンとともに……




→Un afterword
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