頂を目指す二ノ姫U

□都大会2週間前
1ページ/4ページ






「悪いが…お断りする!」





『申しわけありませんが、そのようなことは今お受けしておりませんので』





受話器にそう言ったスミレと桜は同時に受話器を置いて溜息をついた
その表情には疲れが見てとれる


「すまないね、桜
アタシだけだと捌ききれなくてね
もう戻っていいよ」

『別にいいわよ
外に出てるとカメラの音とかビデオの音とかうるさいからうんざりしてたのよね
国光とかだけ撮ってればいいのに』

「アッハッハ。大変だねぇお前さんも」


他人事のように笑うスミレに苦笑して桜は教官室を後にした
その姿を見送ってスミレは背もたれに寄りかかった


「どこもかしこも青学との練習試合を申し込みにきてる…
相当気になっとるな
フフ…手塚目当てか桜目当てか、それとも」


また電話の音が鳴り響く






















コートに向かう道すがら機械音がついて回り、桜はこめかみを押さえた
マネージャーじゃなくて選手を撮れ、と言いたくなるのを我慢してジャージを直してコートに入る
コートの一角に手塚と河村、大石が集まっているのでそこに足を向けた


「お帰り桜。お疲れ様」

『ありがとうタカさん。ほんと肩凝ったわ』

「かなり電話が来ていたみたいだな」

『ええ。他校のテニス部から
それにしてもすごい偵察の数よね
ここに来る間私までずっと撮られてたわ』


桜はうんざりしたよう顔を顰めて肩を落とした


「これじゃあ他校の桜のファンが隠し撮りしていたとしても分からないな」

『ちょっと秀一郎!怖いこと言わないでよ』

「……気をつけるんだぞ、桜」

『……国光に言われると余計怖いわ』


真面目に目を見て言う手塚に桜は低い声で呟いた
冗談を言わない彼が言うと現実味というか真実味が増して嫌な予感がしてしまう
気を取り直して桜は先程から気になっていることを口にした


『ところで何人来てるのかしら、偵察』

「乾が言ってたよ。49人だってさ」

『49人!去年と一昨年の平均に比べると1.75倍増えてるわね』

「覚えてたのか」


面白そうに目を細める桜を手塚は感心したように見つめた


「(さすがだな…)」

『そうそう。都大会出場校も出揃ったわね』

「ああ。常連組の氷帝学園に
他にはJr.選抜経験のある千石君が率いる山吹中が今大会の台風の目になりそうだ」

「それと、地区2位の不動峰!」

『そうね』


手塚はそれを聞くとコート中に声を張り上げた


「よし。サーブ&ボレーだ。2年はレシーバーに入れ!」

「はい!!」

「ううっ。なんかもり上がってきたね!」

「うん」


桜はドリンクを作り洗濯物を干して、とマネ業をする傍らコーチ業もしていた
ノートに選手のコンディションや練習の成果、苦手コースなどを書き込んでいる
それが丁度一段落したころ、ドリンクの量が少なくなってきているのに気が付いた


『さすがねぇ。ドリンクの減りも早いわ』


彼らの練習量の多さが伺える
桜は嬉しそうに部室に足を向けたが、その直後同じクラスの女子テニス部員に呼び止められた


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ